【判った気になれる特殊相対性理論その5】速く動くものの時間は遅れる

【判った気になれる特殊相対性理論その5】速く動くものの時間は遅れる

前項はこちら

光速ロケットに乗っていると長生きできる

物質は原子から出来ていて、全ての原子には固有の振動がある

その原子をさらに細かくしていくと、最終的には電子とクオークという体積のない素粒子に行きつく。

体積はないのだが、素粒子はスピン(回転)運動をしており、これが原子の振動を引き起こしているのだ。

Advertisement

例えば亜光速で飛ぶことができるロケットがあったとする。

ロケットの速度を徐々に上げていって、スピードが光速に近づくにつれ、ロケットを構成する原子の振動が次第にゆっくりになってくる。

理由はよくわかっていない。

ロケットに載せた時計の構成要素たる原子の振動も、同様にゆっくりしてくる。

それが原子時計であろうが、水晶時計であろうが、ゼンマイ時計であろうが同じ。

原子の振動がゆっくりしてくるということは、時間が遅れるということになる。

ロケットに乗船中の人間にも、この「原子振動のゆっくり現象」が起こる。

その人間の生命活動がゆっくりになるのだ。

つまり、ロケットが速く進めば進むほど、中の人は長生きできるという理屈になる。

さらに言うと、ロケットがほぼ光速に達した段階で、時計も人間の細胞もほとんど静止状態に至る。

人間は年をとらなくなる。

イラストはNASAが構想中の光速ロケット。空間の湾曲を利用するんだとか。なんのこっちゃ。

証拠となるミュー粒子

遠い宇宙のかなたの、超新星爆発などによって発生した一次宇宙線が、地球大気の上部で大気を構成する窒素や酸素などの原子と衝突することで、パイ中間子が生まれ、それが今度はミュー粒子(muon)という二次宇宙線を生成する。

ミュー粒子は誕生した瞬間に崩壊してしまうほど短命なので、とても地球の地表にまで届くはずがないのだが、実際は届いている。

理由は、速度が光に近いほどに速いことから、時間が遅く流れるので寿命が「みゅおーん」と延びるからである。

本来は崩壊までにわずか1km弱しか進めないはずなのに、相対性理論的延命措置を受けるために10数km進めるようになる。

これがミュー粒子が地表に届く理屈だ。

速く動く物質の時間はゆっくり進む。

アインシュタインの予言が正しかったことの証拠である。

Advertisement

余談1. ミュー粒子について

ミュー粒子、英語名でミューオンは電子の仲間であり、電子より200倍重たい素粒子のひとつ。

その何でも通り抜けてしまう透過力を利用して、レントゲンのX線のように、火山や地球内部の構造を調査するのに使われている。

連続して観測すれば火山内のマグマの変化が観測できるため、噴火の予知に役立っている。

これらは日本が先頭に立つ新しい技術だ。

他にも、ミューオン触媒型核融合と称される、新方式の核融合における触媒機能に期待が寄せられている。

未だ研究途上だが、この方式は現在のトカマク型核融合炉が持つ欠点を克服できる可能性がある。

現行方式では非常に困難を伴う水素原子同士の接近を、ミュー粒子が容易にしてくれるのだそうだ。

但し、そのミュー粒子を生成する手段が、非常に高額な加速器利用による人工的な方法しかないので、その費用をいかに低減させていくかが課題となる。

Advertisement

余談2. 万物は回転する

13世紀、ルーミーによって開かれ、トルコのコンヤに本部を置くイスラム教神秘主義のメヴレヴィー教団。

この教団は、「宇宙は神のご意思に従って回転しているのだから、人間も回転することで神に近づくことが出来る」という教義のもと、セマー(旋舞)と呼ばれる回転舞踊を宗教行事として行っている。

死を象徴する白く大きなスカートを身に着けた信者が、長時間回転しながら神に祈るのである。

最近の科学により初めて判明した素粒子のスピン運動。

文字通り、物質の全ては回転運動をその内に秘めているのだが、13世紀のイスラム教徒に既に了解されていたとは恐れ入る。

酒を飲むと、急に自分が賢くなった感じがして、そのうち目が回りだすのも神に近づいた証拠なのであろうか(違います)。

Advertisement

余談3. 心拍数と寿命

興味深いことに原子の振動と時間の関係に似ているのが、哺乳類の心拍数と寿命の関係性だ。

1992年に出版された本川達雄著による『ゾウの時間・ネズミの時間』によると、単位時間当たりの心拍数が多いほど、その動物の寿命は短くなるし、逆に少ない動物の寿命は長い傾向にあるのだという。

ハツカネズミの心拍数は、0.1秒に1回で寿命は2~3年。

ゾウの場合は、3秒に1回で寿命は70年ほど。

一生の間に打つ心拍数は、面白いことに哺乳類だいたい共通で15億回なんだそうだ。

一回の心拍が1秒ほどの人間はしかし、80歳以上の寿命の個体が当たり前なので法則の例外になるが、これは人間が歯科を含む医療、食事、社会保障など、寿命を延ばす文明を築いたから。

因みに文明以前の人間の寿命は30歳程度であったそうだから、その場合は法則に当てはまることになる。

従って、もしゾウの歯医者さんが当たり前に存在したら、ゾウの寿命は70歳を大きく超えることになるだろう。

Advertisement

続きはこちら

科学カテゴリの最新記事