独立自尊のバルセロナ
われわれはかの国を、「スペイン」と呼んでいるが、実はあまり良い呼称ではない。
望ましいのは「エスパーニャ」、あるいは「イベリカ」である。
バルセロナを擁するカタルーニャは独立志向が強い。
街のアパートの窓やベランダからカタルーニャの旗を掲げている多くの部屋を見ることが出来る。
自分たちが稼いだものを、他のスペイン地域が吸い上げていると、不公平感を募らせているのだ。
南半分をイスラムに支配されていた歴史を持つスペインは、他の欧州地域とは異なる独特な雰囲気を醸し出している。
しかし、バルセロナはその南半分にきっぱり背を向けている。
人々の日常後はカタラン語であるし、スペインの伝統として有名な闘牛も、バルセロナでは禁止となっている。
市内の巨大闘牛場跡は、今やショッピングモールだ。
イスラム建築の最高峰・アルハンブラ宮殿
アルハンブラは、「赤い城」の意味だそうだが、実際に訪れてみると、色が赤いわけではない。
諸説あるが、古代より人類は赤い色に特別な想いをよせてきた。
クレムリンにある「赤の広場」の赤は、「美しい」という意味だとロシア人から聞いたことがある。
それと似たような気分があっての命名なのかもしれない。
アルハンブラ宮殿の壮大な建物群は、グラナダの街を見下ろす高台に建っている。
そこは夏になると高温になる市街に比べ、気温が低いそうだ。
1992年の冬と、2013年秋の2度、ここを訪れた。
私がアルハンブラ宮殿内で一番気に入った場所は「植物園」と呼ばれているヘネラリフェ離宮だ。
細長い長方形型の、まるで池のような水路があって、柑橘類、アカンサスなど様々な種類の植物がその周囲に植えられている。
元々、砂漠の出身であったイスラム教徒は、水と緑のある景色をこよなく愛した。
水路の一方の端から水が入り、ゆっくりと流れていく。
反対側には大きな開口部を持つ建物がある。
イスラムの君主スルタンは、そこで水音を聞き、樹木を渡って来る風で精神を休ませたのであろう。
アルハンブラ宮殿の向こうには、美しいシエラ・ネバダを臨める。
この山中でつくられるハムは、私の見解では世界で一番うまいと思う。