【たぶん本物】東京でBANKSYのグラフティが発見される

【たぶん本物】東京でBANKSYのグラフティが発見される

日本で唯一のBanksyアート?

こうやって普段現代アートに興味のない人間から、テレビ局、大手新聞社までこぞって彼の作品の真贋について話題にすることまでひっくるめて、Banksyの手の内で踊っているような気がしますが、面白いニュースだったので記事にしてみました。

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Banksy(バンクシー)はその素性が一切謎に包まれたグラフティアーティストで、英国を拠点に活動しています。グラフティというのは、まあ簡単に言うと「落書き」のことです。街中の建物などに、所有者の許可なく作品を描くのが特徴で、たいていの場合ただの迷惑行為なんですが、一部のグラフティアーティストの作品は、その芸術性(広い意味において)の高さから人気を博し、作品が描かれた建物の資産価値が上がったりすらしています。Banksyは、その代表格と言える存在で、グラフティ界のカリスマです。昨年もオークションにかけられた自身の絵画の額縁に事前にシュレッダーを仕込んでおいて、落札と同時にスイッチを起動、絵画を細断して話題になりました。落札価格は1億5000万円でした。

で、今回話題になっているのが東京臨海新交通臨海線(ゆりかもめ)の日の出駅近くにある防潮扉に描かれたネズミの絵。


報道によると現在は、この防潮扉を管轄する東京都によって、この絵の部分は取り外され、専門家による鑑定をしているところだとか。SNSではさっそくこの絵の真贋について議論が白熱しています。もし本物だとすれば、Banksyが手がけた日本にある唯一のグラフティとなる可能性が高く、批判はあれど東京都が保全に動いたのは仕方がないでしょう。目立ちたがりの馬鹿が消したり上書きしたりしないとも限らないので。

個人的に僕はこの絵はBanksyによる本物だと思いますので、その根拠を書いておきます。

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本物だと思う理由

1. 図案そのものは間違いなくBanksyによるもの

Banksyという人は、アート活動の一環として映画を作ったりもしてるんですが、2011年の彼の初監督作品、『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』というドキュメンタリー映画に、防潮扉に残された図案と全く同じ絵が登場します。具体的には映画の冒頭から23分39秒経過したあたり。

背景からして、今回発見されたとされている絵そのものじゃねえか。という気もしますがとりあえずそのことは置いといて、まず図案そのものは彼のもので間違いありません。さっきから図案という言い方をしているのはですね、この落書き、図案通りにカッティングされたステンシルの型紙の上からスプレーを吹き付けて描かれたものですので、その型紙さえあればどこの誰でも同じような絵が描けるわけです。ですからこの図案が、Banksyによるものだからといってすぐ本人の作とは言えません。(とはいえ、背景の色、扉に固定されたビスの形状や間隔からして、この時点で疑う由はなさそうですがね。)

ちなみにこの『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』というドキュメンタリー映画は大変な傑作ですので、未見の方、騙されたと思ってぜひご覧ください。冷や水浴びせられたような衝撃と共に、Banksyというアーティストの並々ならぬ才能の片鱗を垣間見ることができます。

2. 作品集に載っている

先ほどこのアートが描かれた技法について説明しましたが、故にこの技法が使われているBanksyのアートは、その真贋は本人にしか判らないということになります。気の向いたときにしか発言しないBanksyが、わざわざこの件についてコメントを出したり、東京都の問い合わせに答えるとは思えず、また描かれた場所が人目にあまりつかないことや、トータルとして見た時にメッセージ性もそれほど強くないということが「贋作説」の論拠になったりもしています。

要するに「図案」と「場所」、そして本人による「認証」があって初めてBanksyのアートは彼の手によるものと判明するわけですが、2011年に邦訳版が出版された彼の公式作品集『Wall and Piece』の107頁に「2003 TOKYO」というキャプションと共に、この図案の写真が掲載されています。


話題の絵とは左右反転されていますが、当該作品集にはこうした紙焼きの際に左右を取り違ってしまっている写真が数点入っており、地面の形状、扉の金属部分が違う場所でここまで類似することは考えにくく、この写真こそ、今回発見された絵と同じものであると考えるのが自然です。キャプション通り、2003年に描かれたものであれば15年の間の風雪による劣化も頷けます。

Banksyは2000年代初頭、キャリアの初期に日本のアパレルブランド『montage』とコラボしたりしています。ビジネスで何度か来日していたとしても不自然さはありません。企業とのコラボ自体が現在では考えられませんが、アーティストとしての姿勢そのものがまだ固まっていない時期の作品と考えれば、メッセージ性の薄さもそれほど不思議はないのかもしれません。

いかがでしたか?僕が本物だと思う論拠は以上です。スマホで検索すれば何でも判ってしまう時代に、こういった謎がまだ残されてると嬉しくなりますね。

それにしても小池都知事の写真。

築地からネズミを追い出した彼女がこうして寄る辺もなさそうなネズミの絵と一緒に映ってるとは。狙ったわけじゃないんでしょうが、この図をもってひとつのBanksyのアートとして成立してる気がするのは僕だけでしょうか。

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