E=mc2
われわれの目の前に広がっている複雑極まりない世界。その世界を内包する深遠なる宇宙。
「混沌」と表現すべきこれらの存在が、秩序の権化のような数学によって説明され、且つ予測されてしまうということには驚かされる。
アインシュタインは特殊相対性理論において、物質が動くと、動かしたエネルギーの一部が質量に変化する、すなわちエネルギーと質量は等価であるとした。
その関係を数式にすると
E(エネルギー)=m(質量)×c^2(光速度の2乗)となる。
等価であるということはつまり、質量が消えればそこにはエネルギーが生まれ、エネルギーが消えればそこには質量が発生するということだ。
われわれのいる宇宙は、エネルギーが質量へ転換されることで「無」から生まれ出たのだ。
特殊相対性理論では、動く物質の質量が増加するのは、加速エネルギーが質量に変化するから、としている。
アインシュタインの時代、このことを実験にて証明する手段はなかったが、現在では加速器を使って確認することが出来る。
大型ハドロン衝突型加速器
質量とエネルギーは等価であり、加速エネルギーは質量に変わる。
それを明瞭な形で判らせてくれるのが以前記事に書いた大型ハドロン衝突型加速器である。
この加速器で陽子の速度を上げてゆき、ほとんど光速度に至った段階では、質量は10倍にも増えてしまっていることが確認された。
物質の速度が光速度の一歩手前までになると、それ以上速度は上がらなくなる。
加速エネルギーの全てが質量に変化してしまうからだ。
この加速器で質量のない光子同士を衝突させても、やはり物質粒子が誕生する。
核分裂も同様で、ウランの原子核に中性子をぶつけると核が分裂して他の物質に変わる。
その時にエネルギーが放出されるのだ。
原子爆弾
科学の進歩の不幸な帰結と言える原子爆弾も、理屈は同じで、積載されたウランのほんの一部がエネルギーに変換されるだけで、街がひとつ消し飛んでしまうほどの破壊をもたらす。
広島に投下された原爆の場合、積まれていたウラン235のたった1%程度、約800グラムだけがエネルギー化したと言われているが、そんな少量でもあの惨状だ。
ウランの中で核分裂を起こすのは、他の同位体ではありえずウラン235のみだが、天然に存在するその濃度は0.72%と核分裂反応を起こすには不十分である。
核爆発に必要な濃度は20%~90%。であるから、遠心分離機を使って濃縮を繰り返し、高濃度の爆弾原料に仕上げるわけだ。
アインシュタインなかりせば
古代から光は不思議な存在であったが、19世紀までは、「まあ、たぶん他の物質と同じに扱っても差し支えないけど、触らぬ神に祟りなし。」で、なんとか誤魔化してきたのだが、観測機器などの発達で、見て見ぬふりを続けることができなくなった。
「光」はアインシュタインにとって生涯の研究課題であった。
現在も、何人もの科学者、物理学者がアインシュタインの数式を元にして宇宙の謎を解き明かすべく、最新の理論を構築しようとしている。
原子爆弾は、負の成果物とハッキリ言えるが、アインシュタインの理論は、時を経てその正しさが証明され続けているのだ。