「当たり前」を疑え
我々は、普段「物質」に囲まれて生きている。
大気、海や河川、動植物、建物、家具、食料、そしてわれわれ人類も「物質」である。
それ故に多くの人が、「物質」こそが存在の基本であり、「空間」とは、主となる「物質」を入れるための器のようなもので、「時間」は、「物質」や「空間」とは独立し、過去から未来へ場所の如何を問わず、一方的に且つ一定間隔で流れる、経過を表す指針であると固く信じ込んでしまっている。
この認識は必ずしも正しいものではないと、再考を促したのがアインシュタインである。
彼の語る内容は、「不思議」に満ち溢れている。
彼の言葉を「不思議」と思うのは、我々が、今この瞬間の宇宙の姿にとらわれすぎているからに他ならない。
そもそも宇宙とは
昔々の大昔、あるところに「点」があった。
どこにあったか?それはどこでもいいのだ。
「点」には体積がないから、「空間」もなければ、「時間」もないし、もちろん「物質」もない。
だけどゼロではない。
そこにはエネルギーがわんさと詰まっていて、燃えに燃えていた。
「点」なのにどうして?エネルギーには体積がないので、「点」の中に無限に詰め込めるのである。
詭弁のように聞こえるかもしれないが、ここは我慢して、そういうものだと、ということにしておいて欲しい。
その膨大なエネルギーを詰めていた「点」が、あるときほんの少し「膨れてみた」のである。
これが「インフレーション」だ。
この時点で「点」は微小ながらも「空間」に昇格したのである。
昇格おめでとう、なんて言う暇もなく、次の瞬間その微小な「空間」が破裂した。
これが「ビッグバン」と言われる現象である。
「点」から「ビッグバン」まで、1秒の何分の1というごく短い時間の出来事であった。
起こったのは、今から138億年前のこと。
「空間」と共に「時間」もポンと生まれ出た。
その後も「空間」は広がり続けて、今日見るような広大な宇宙へと膨れ上がっているのである。
膨れ上がることにより、冷却が始まった。
冷却されることにより、エネルギーの一部は「素粒子」というものに変化した。
相が移転したのだ。液体の水が摂氏0℃にて固体へ変わるのとイメージは同じだ。
この「素粒子」もまた、「点」の如き存在である。「素粒子」には体積がない。
「素粒子」が作られる際の冷却の程度の違いが、「素粒子」の性格の違いをもたらした。
つまりいろんな種類の「素粒子」が展開したのだ。
それらは3つに大別できる。
素粒子の種別
1. 物質の内容となるもの / クオークや電子
2. 1.同士をくっつける役割を担うもの / 重力子や光子
3. 物質に重さを与えるもの / ヒッグス粒子
上記3種類が協力し合って、太陽のような恒星、地球などの惑星、植物、ミミズ、人間などの「物質」が作られた。
つまりだ、元々は、「物質」も「空間」も「時間」も、「点」の中にあるエネルギーとして一体化していたのだ。
アインシュタインの理論を紐解くうえで、こういった宇宙のなりたちを理解しておくことが前提として重要となる。
なぜ「点」だったのか?
なぜ「インフレーション」は発生したのか?
なぜ「ビッグバン」は起こったのか?
これらに答えはまだない。だが、そこで思考停止してはいけない。