北斎と引っ越し
私事になるが、今までの人生において主要なものだけでも30回近く「引っ越し」をしてきた。
であるからして、新米の引っ越し屋さんよりは経験豊富である。
専用の梱包材なんかなくても、新聞紙さえあれば食器などの割れ物も、素早く、無駄なスペースを取ることなく、十分に保護しつつ梱包できるものだ。
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ところが上には上がいるもので、葛飾北斎さんは生涯において90回以上も引っ越しをしたのだそうだ。
彼の人生は約90年であったから、平均すると年に一回引っ越しをしたことになる。
そんなに頻繁にした理由と言うのが面白い。
「住んでいると汚れてくる。」
そりゃあそうだ、毎日絵を描いていれば絵の具は飛び散るし、床も調度品も汚れてくるだろう。
で、彼は掃除をするのが面倒なので、家が汚れてくると新居に移る、というのを繰り返したんだそうだ。
ついでに言うと北斎さんは90歳近くになってからも、江戸と長野県は小布施の間を徒歩で何度も往復した。
小布施には北斎さんの支援者がいたのだ。
小布施に行くと、北斎さんが使用したという小さなアトリエを見学することができる。
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乱歩と引っ越し
引っ越しの回数でいうと江戸川乱歩さんもたいしたものだ。
彼は生涯で42回引っ越しをした。
彼の場合は、大変な愛書家だったので、蔵書が蓄積してくると、置き場所がなくなり、より大きな家に引っ越すということを繰り返したのだそうだ。
よくある理由に見えるが、42回も引っ越しが必要なほどとは、どんな本の量だろう。
42回目の引っ越し先の大きさが気になるところだ。
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