2018年11月30日午後1時
私はJR京葉線海浜幕張駅のプラットホームに降り立った。適当な理由で仕事を早退し、生活圏から遠い千葉県まではるばるやってきたのは他でもない。私にとって年に一度の「祭り」東京コミコンに参加するためだ。
普段は、こういったイベントやライヴなど、人が大勢集まる催し物に対して非常に腰が重いのだが、今年(2018)で第3回を数えるこの『東京コミコン』には何故か皆勤で来てしまっている。初日となる今日金曜日(11月30日)は、土日と異なる開場時間、正午からの開催だ。だが私はあえて午後1時半に会場に着くよう調整した。それは、前2回とも開場前、午前11時頃についてしまって開場待ちの長い待機列に並ぶ羽目になったからだ。
東京コミコンは回を重ねるごとに動員数は増えているものの、よく取り違えられるコミックマーケットとは違い、開場待ちをする熱心なファンの入場が1時間ほどで終わると、並ばなくてもすぐ入場できる状態になることは前2回で確認済だ。開場から少し遅れていくやり方は、オープニングセレモニーを見逃したり、個数限定のグッズを買い逃す危険が増えるといったデメリットはあるものの、行列に並ぶことをストレスに感じる人間にとってはオススメの方法だ。
当日券で入場する
チケット売り場で当日券(一般3500円)を買う。何故700円も安い前売り券を買わないのか。少しでも売上に貢献して今後のイベント存続のお役に立ちたいというのは建前で、単純に毎年、いつでも買えると思ってたら当日になってしまうパターンなだけだ。当日券売り場から入場口までは結構離れている。
入場後目に飛び込んで来たのは、前年より明らかに豪華になっている色とりどりの出展者ブースと、巨大なメインモニター、そして来場客の5人に1人くらいの割合でいるおもいおもいの格好をしたコスプレイヤー達。毎年DCやマーベルのキャラクターを模したコスプレが多いようだ。
「なんでそのキャラ選んだんだよ。」ってくらいマニアックなキャラクターのコスプレを見るのと無性に嬉しくなる。今年はマーズアタックの火星人が一番良かった。
来場した目的
入場して最初に向かったのは、バンダイのブースだ。昨年は筆者が集めている『SHFiguarts』というフィギュアのシリーズの受注予約販売アイテムが、会場限定で再販されていたのだ。チケットの前売りと同じで、欲しいと思っていても殆ど買い逃してしまう私だが、「東京コミコンで売ってるからいいか」と余裕で構えていた。それ用のお小遣いも潤沢に持っていった。だがしかし、今年はそういうことをやっていないらしい。
なぜだバンダイ。同じ台東区民として、影に日向に商品を買い続けて応援しているというのにこの仕打ちはか。自社イベント(魂ネイション)を優先して、コミコンには限定品は出さないようにするつもりなのか。あっちのイベントは混みすぎるから嫌なんだ・・・。
フードエリアにて
当てが外れた私は、ひとまずフードエリアに行くことにする。ビー
落ち込みかけたが、美味しいクラフトビールで自然に気持ちが高揚してくる。そ
フードエリアからはメインステージの様子がよく見えるのだが、ちょうど、ロボ
ビールを飲み終わったので会場内を散策する。東京コミコンといえば、ハリウッドスターと直接会えるサイン会や写真撮影会が売り物だが、私にはその予定はない。もちろん映画スターに会いたくないことはないのだが、握手会やサイン会に2万円とか3万円払うなら、持って帰れるものが欲しいと思ってしまう。スターは一般会場にフラっと現れることも多いので、誰かには必ず会えるのだ。現に散策中に『バーフバリ』で悪役を演じたラーナー・ダッグバーディーが目の前を通っていった。劇中と違ってにこやかなナイスガイだった。
アーティストアレイ
もう一つコミコンならではの名物としてアーティストアレイの存在がある。私にとってはこのエリアを見物するのが一番楽しい。
アメコミには「コミッション」という独特の文化があって、金銭と引き換えにアーティスト本人と交渉して自分が希望する絵を描いてもらうこともできる。金額の相場は、アーティストの格にも依るのだが、東京コミコンでは、だいたいキャラクターの顔だけだと5,000円くらい。上半身は10,000円、全身だと16,000〜20,000円くらいの設定が多いようだ。これはペン入れだけの価格なので、ベタ塗りとかをお願いするとそれはオプションで追加料金が発生する。
人気アーティストはイベント開催日の前にSNSなどで注文を募集して、イベント当日に引き渡しを行なったりする。当日お願いできたとしても、その場で受け取ることはできないので、複数日設定されているイベントの場合は指定された日にもう一度行く必要があるので注意が必要だ。
各アーティストのブースで販売しているポートフォリオやポスターを一定額以上購入すると、サービスで「スケッチ」をその場で描いてプレゼントしてくれたりするアーティストも多い。『Batman of the Future』のライアン・ベンジャミン氏や、ヘルボーイのダンカン・フィグレド氏ら、自分の所有するアメコミのアーティストが目の前で絵を描いているのを見れるのは感慨深いものがある。
何するわけでもなくアーティストアレイを1時間近く見物した後、散策を続けることにした。
会場の様子
今年は昨年までよりさらに大規模なマーベルストアが、会場の中心に設営されて大変な人気を集めている。だが、どうやら客の動線がうまく引けていない。比較的空いている今日ですら大混雑&大行列で入場規制を行なっている。明日明後日はどうなってしまうのだろうか。関係者らしき人々が、ブースの周りで臨時ミーティングしているのを何度も見かけた。ここのストアが目当ての人は、できるだけ早く入場待機列に並んだ方がいいだろう。
広い会場内には、人混みが途切れているエリアもちらほらある。今年は月光仮面生誕60周年記念らしく、ねぶたがドドンとおもむろに展示されていたが、正直観客の耳目を集めているとは言い難かった。コミコンというと何となく「洋画」「アメコミ」のフェスというイメージだが、日本独自のコンテンツとして「特撮」をプッシュしていきたいのだろう。客の年齢層を考えると月光仮面はちょっと遡りすぎだったかもしれない。
お土産購入
お目当てのフィギュアが買えなかったとはいえ、せっかく来たので何か記念に買って帰りたかった。ただ、私のように普段から、暇を見つけては都内にあるUSトイショップに足しげく通っている人間にとっては、グッズ的に目新しいものはそこまで多くない。
と、ブレードランナーのレプリカブラスターで洋画ファンの間にその名を馳せる下呂温泉の『留之助商店』のブースが目に入る。今年はショップオリジナルのソフビ人形なども販売していたが、やはり目を引くのは歴代留之助ブラスターだ。ふと見るとショーケースの中にブラスターの形をしたピンバッジが展示されていて価格が付いている。デザインがとてもかわいらしい。即購入。2個セットで、ブラスターの右側面と左側面違うデザインになっているのだ。本当にいい買い物をした。
会場中央に展示されている『ダークナイトライジング』のバットマンスーツや、ターミネーター2に登場したハーレーなどを撮影していると、先日亡くなったスタン・リーをしのぶモニュメントのコーナーに出た。彼がいなければスパイダーマンもアイアンマンもドクター・ストレンジもこの世に存在しなかったのだ。昨年のコミコンで来日された時は元気そうだったのに。自然と少し涙が出た。
ジャンケン大会
スカパーのブースを通りかかると、突然杉山すぴ豊さんのトークショーが始まった。DCドラマ『アロー』の絡みでグリーンアローの解説をしていた。アメリカのDC本社を訪問した際のお話が大変興味深かった。トークショーの最後に杉山さんからのプレゼントを賭けたジャンケン大会が始まった。商品はコトブキヤ製のグリーンアローのフィギュア。聴衆全員参加のジャンケンで、私は何と最後の二人まで勝ち残った。もう一人は妙齢のご婦人。相手が女性なら、最後のジャンケンをせず譲るのが男前というものなのだろうが、商品がフィギュアと聞いて目の色が変わってしまった私の念頭には一切その案は浮かばず。フィギュアも貴女にもらわれるより、専用のショーケースを持っている私にもらわれた方が幸せだなのだ。いざ尋常に勝負。
全力でジャンケンして、結局負けるという、二重のかっこ悪さを晒してしまった。杉山さんが「彼はあえて負けて譲ったんですよ」とフォローしてくれたが、その場にいた誰もが「こいつ本気だったな」と思ったはずだ。
幸せな気持ちで帰宅
午後6時を過ぎ、そろそろ帰らなければならない。子供の受験勉強中に単独で遊びに行ったことなどバレてはならないのだ。メインステージではちょうどトム・ヒドルストンが登壇し、気さくな人柄を披露していた。もうこれで思い残すことはない。スクリーンを通して響いてくる今日一番の盛り上がりを背に出口に向かう。途中コトブキヤのブースがあったので、自分があと一人でもらい損ねたフィギュアの価格を調べてみる。7,800円とあった。無意識に舌打ちが出た。
来年も無事開催されれば、その頃には子供の受験もとっくに終わり、坊主と二人で来れるかもしれない。歩き疲れたなと思ってiphoneの万歩計を見たら、約24,000歩、歩いていたことが分かった。
(おしまい)