ホラーじゃなくてほっこりバディムービー『ヴェノム』(2018)レビュー

ホラーじゃなくてほっこりバディムービー『ヴェノム』(2018)レビュー
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観る前は若干不安でした

『ゾンビランド』(2009)『ピザボーイ』(2011)のルーベン・フライシャー監督に『ウォリアー』(2011)『マッドマックス 怒りのデスロード』(2015)のトム・ハーディー主演と、ほぼ完璧な座組の上に扱う題材はマーベルユニバース最高の人気ヴィランときたらもう好材料の満漢全席。

本来であれば観る前に不安など感じるはずもない映画のはずですが、ここ数年、粗製乱造されるアメコミヒーローものの玉石混交ぶりに、一際警戒心と猜疑心が強くなっていたところに、追い討ちをかける(一足先に公開された)海外映画レビューサイトの低評価。

さてはスーサイドスクワッドの再来かと、おっかなびっくり劇場に足を運んだのだが、全くの杞憂でした(にっこり)


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れっきとしたヒーロー映画です

正義感溢れる善良な男に、残虐な宇宙生物が寄生し、制御が難しい超常の力を与えるという話の構図は、アニメ版『デビルマン』やジャンプのNARUTOなんかを引き合いに出さなくとも、いたってオーソドックスな少年漫画的展開です。

普遍的ゆえに安定感のある話運びに、トム・ハーディーやリズ・アーメッドといった脂の乗った俳優が抑制の効いた、それでいて活き活きとした演技で映画に勢いを与えています。

さらに絶妙だと感じたのは、肝心の「ヴェノム」そのものの描き方。筋骨隆々、凶悪でいて、どことなくお茶目な原作のイメージを全く損なうことなく実写化に成功していました。サム・ライミの『スパイダーマン3』でファンが盛大に喰らった肩透かしの憂さを、画面ところ狭しと暴れ回る今作のヴェノムは見事に晴らしてくれていました。

話せばわかるエイリアン

「最も残虐な悪が誕生する」なんて刺激的なコピーが目を引いた本作。

ヴェノムの容姿も相まってさぞかし「グロテスクな映画なのだろう」と警戒されるかもしれない。

だがこの映画の一番のチャームポイントは誰あろう、そのヴェノムのキャラクターです

エイリアンやプレデター、メガトロンやインディペンデンスデイのあいつら等、古今東西色んな宇宙人が地球を襲いにきたけれど、ヴェノムほど話のわかる奴がかつていただろうか。

悲壮感溢れすぎない飄々とした人間主人公と、誰かに寄生しないと生きていけない宇宙の乱暴者。一風変わったバディムービーという見方が一番しっくりきます。

総評:79点

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(文・イラスト:アクトンボーイ)

 

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