【40歳からのトランスフォーマー】ロボ玩具界最強の2大IP『Gundum』と『Transformers』を比較してみる

【40歳からのトランスフォーマー】ロボ玩具界最強の2大IP『Gundum』と『Transformers』を比較してみる

数年前に別の媒体で書いたのとほぼ同じ内容なんですが、当時あんまりアクセス数が伸びなかった割に、今読み返してみると我ながら結構興味深い内容であったので、誤認識していた部分や、調査不足であった点をふまえて修正しつつリライトしたものが本稿となります。

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やぶから棒に何ですか、貴方は「人気のあるロボットアニメ」と聞いて、どのタイトルを連想しますか?

エヴァンゲリオンにコードギアス、マクロスにガオガイガーにグレンラガン、「ドラえもん」なんて言う人も中にはいるかもしれませんが、十人十色、百花繚乱のコンテンツが口端に上るであろう中でも、こと日本国内において、人気の尺度を「関連玩具の売上」にした場合、圧倒的なシェアを占めることになるのは、ご存じ『機動戦士ガンダム』です。

1979年の初代アニメ放映終了後、追随する形で発売されたプラモデルで社会現象となった「ガンダム」。過去30年間で販売されたガンプラの数は何と4億パッケージを超えます。玩具メーカーとアニメのメディアミックス最大の成功例として、時代の潮流を作り、数えきれないフォロワーを生みだしてきたお化けコンテンツですが、太平洋を隔てた北米に目を向けると「ガンダム」の人気や認知度は日本国内やアジア圏ほどではなく、かわりにロボット玩具界頂点の座に君臨して久しいのが『トランスフォーマー』なのです。

「ガンダム」というコンテンツ自体は、アメリカに何度も輸出が試みられており、スピルバーグ監督作品『レディ・プレイヤーワン』に登場したり、スターウォーズ・フィン役のジョン・ボイエガが熱狂的なファンだったりと地道に人気を伸ばしつつありますが、アメリカ国内においては「ガンダム」は、まだまだ「トランスフォーマー」の敵ではないのが現状です。

どちらも二足歩行の人間型ロボットが主役のアニメですし、登場ロボットのデザインにこそ玩具としての訴求力があり、30年以上の歴史を持っている、と共通点が多く、また興味深いことにハズブロ社の「トランスフォーマー」関連の売上高と、バンダイナムコ社の「ガンダム」関連商品の売上高も非常に近い数字(年間400億円前後)なのですが、その売り上げの分布を見ると、アメリカを中心に世界中満遍なく人気のある「トランスフォーマー」に対して、「ガンダム」は日本国内とアジアの人気が抜きんでている形になります。

なぜ欧米人は「ガンダム」よりも「トランスフォーマー」が好きで、なぜ日本では「トランスフォーマー」よりも「ガンダム」が圧倒的な人気を獲得しているのでしょうか。もちろん原産国の優位というものが大きいのは承知していますが、それ以外に読み取れるものはないか、素人なりに調べてみました。

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キリスト教の影響下

「フランケンシュタイン・コンプレックス」という言葉をご存知ですか?

これはSF小説家アイザック・アシモフが造った言葉ですが、キリスト教圏ではその教義から、人間が人工の生命体を作る行為は、造物主(神)に対する重大な不敬であり、その罪は生みだされた者の反乱という形で罰としていずれ人間側に降りかかる、という考え方が根強くあります。このキリスト教由来の潜在的な恐怖心を「フランケンシュタイン・コンプレックス」とアシモフは名付けました。

そもそも「ロボット」という言葉は、1920年代の劇作家カレル・チャペックが書いた戯曲が元ネタとなっており、そのストーリーはといえば、作業用に生みだされたロボットが、自らの境遇を呪い、主人を殺すという物語です。

言われてみるとこのような「ロボットの反逆」を題材にしたハリウッド映画の有名な作品は数多く、『マトリックス』に『ターミネーター』、『アイロボット』に『エクス・マキナ』最近でいうとみんな大好きMCUの『アベンジャーズ:エイジ・オブ・ウルトロン』もそんな話でしたね。

「ロボットは信用できない、何故ならば裏切るから。」

これがキリスト教圏の人々の根源的な考え方であるわけです。

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八百万の神がいる日本

それでは我々日本人が持つ「ロボット」のイメージはどうでしょうか。

鉄人28号にはじまり、鉄腕アトムにドラえもん、キカイダーにアイギスにビッグオー、創作の世界以外にもホンダのASIMO、ソニーのAIBO、ボーカロイドの初音ミク・・・キリがないのでこれくらいにしておきますが、日本では欧米のような「人工生命体」に対する不信感はほとんど見えず、むしろ「人間の友だちとしてのロボット」が数多く生み出されてきました。

これは私の勝手な解釈ですが、日本には古来より「八百万の神(やおよろずのかみ)」から来る「万物に等しく魂が宿っている」という神道由来の考え方があり、その考え方が日本人には意識せずともいつの間にか備わっていることが原因ではないかと思います。また、キリスト教の影響がほとんど及んでいないため、先進技術やテクノロジーへの疑心も強くないということも無視できない要因でしょう。

ちょうどいいタイミングなので俎上に乗せますが、現在(2019年7月)公開中のディズニー/ピクサー最新作『トイストーリー4』の観客評価が、欧米と日本とで大きな差異が生じたんですね。同作を鑑賞したほとんどの観客が絶賛した欧米に対し、日本では賛否が真っ二つに別れたのです。ネタバレになってしまうので詳しく解説できず、未見の方にはボンヤリした話になってしまうので申し訳ありませんが、この現象は人形や玩具を魂を持った存在としてそのまま受け入れる日本人と、いちいち人間に置き換えて考える欧米人とで、ストーリーの帰着についての印象が異なったから生まれたものではないかと考えます。

そして、このような日本人と欧米人の「人工生命体」に対する距離感こそ、欧米と日本の「コンテンツに向ける温度差」に繋がっているのではないでしょうか。

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トランスフォーマーはロボットだけど…

それでは端的に「ロボットが苦手」の欧米人が、「トランスフォーマー」を受け入れることができた理由はなんでしょうか。そこで参照したいのが「トランスフォーマー」の作品世界設定です。

以下初代アニメ「戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー」のwikipediaを引用します。

はるか昔、超ロボット生命体「トランスフォーマー」が住む惑星・セイバートロンでは、平和を愛するサイバトロンと、武力による惑星の統治を目指すデストロンの2つの勢力が永きに亘り戦争を続けていた。この戦争の影響によって、セイバートロン星のエネルギーは枯渇しようとしていた。

サイバトロンは総司令官コンボイの指揮の下、外宇宙へのエネルギー探索を開始。デストロンも、破壊大帝メガトロンの指揮下で、これを妨害すべく追撃を開始。宇宙空間での戦闘中、双方の宇宙船が「とある惑星」の重力に引き寄せられてしまう。両宇宙船はその惑星に墜落。彼らは全員、機能を停止した。

400万年後、火山の噴火のショックで宇宙船のコンピューターが再起動し、生命再生装置により、トランスフォーマーたちは「その惑星」の到る所にあるエネルギーを蓄えられた物体の姿を借り、復活を遂げた。

このように、「トランスフォーマー」は見た目は「ロボット」ではありますが、人間が造った人工物ではなく、セイバートロンという惑星出身のれっきとした「宇宙人」なのです。日本人には、ロボットだろうと機械生命体だろうと、もしかしたらどちらでも良かったことかもしれませんが、この設定により、トランスフォーマーは欧米人のフランケンシュタイン・コンプレックスからくる嫌悪感を抱かれることなく、受け入れられたのだと推測できます。

「トランスフォーマー」というと日本のタカラトミーの製品というイメージが強いですが、生まれも育ちもドメスティックな「ガンダム」とは異なり、世界観を作り上げたのはアメリカ人でした。35年前、タカラのクオリティの高い変型玩具に目を付けた米ハズブロ社が複数の商品の販売権(タカラだけでなく他社の製品も一緒に)を買取り、オートボットとディセプティコンの2陣営が戦う「トランスフォーマー」という世界観を付随させて売り出したのが始まりです。当然の話ながら、生まれた時からアメリカ人に受け入れやすい世界観を与えられていたわけです。

また逆を言えば、そのアメリカ産の世界観やストーリーが、日本産アニメに慣れ親しんだ日本人の目には違和感に映り、独特の雰囲気に熱狂的な支持層はいるものの、日本国内において「ガンダム」ほどの市民権を得るには至らなかったのかもしれないと推測できます。日本アニメに付きものの美少年や美少女もあんまり登場しませんしね。

いかがでしたでしょうか。

トランスフォーマー玩具の記事を以降書いていきたいがために、なんとなく導入としてこんな記事をあげてみました。

世界に幅広くその人気を持つ「トランスフォーマー」、ほぼ日本及びアジアのみの市場でそのトランスフォーマーと張り合うことができる「ガンダム」。どちらがより優れているとかではなく、両コンテンツに深く関わりのある日本のポップカルチャーの信奉者として、両方とも等しく愛でるというのが、正しい態度であるのだろうと考えます。

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