【微ネタバレ】意外とレアなアメコミ界の「変身」ヒーロー『シャザム!』レビュー 

【微ネタバレ】意外とレアなアメコミ界の「変身」ヒーロー『シャザム!』レビュー 

アメコミ界のレアキャラ

何の変哲もない普通の人間が、掛け声と共に超常の力を持つ存在へと「変身」する。

「日本製のヒーロー」と言うと、ウルトラマンや仮面ライダーなどの特撮作品に代表される、いわゆる「変身ヒーロー」が一般的ですが、海外に目を向けるとこの「変身」という概念は、ジキル博士とハイド氏や狼男のような「怪人」に適用される場合が多く、正義の味方であるところのヒーローが「変身」によって成立するケースは、実はあまり多くありません。

アメコミヒーローの多くは、通常時から人間離れした凄いパワーを体に備えているスーパーマンや、キャプテン・アメリカのような「ナチュラル型」か、専用のスーツを身にまとうことでパワーを得るバットマンやアイアンマンのような「ガジェット型」、技能を達人の域にまで高めることでヒーロー稼業を行っているグリーン・アローやブラック・ウィドウのような「特殊技能型」の3つのタイプに大別できるのですが、本作に登場するシャザムのようなノーマル人間状態がある「変身型」、それも自分の意志でそのオンオフをコントロールできるというタイプは、アメコミ映画百花繚乱の時代とはいえとても珍しいのです。その特性がため、シャザムは日本の特撮ヒーロー同様、「変身シーン」にカタルシスを生ませることができるという点が大きな個性になっています。

 

この変身シーン。カッコよくて大好きです。
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あらすじ(微ネタバレ)

幼いころに親と離れ離れになり、ステップファミリーを転々とする生活を送っている今どきの少年ビリー・バットソン(アッシャー・エンジェル)は、ある日、謎の魔術師に魔法の世界へ召喚され、その奥底に眠る純粋な心を見込まれて世界の救世主に選ばれてしまいます。そして「シャザム!」と呪文を唱えるやS=ソロモンの知力、H=ヘラクラスの強さ、A=アトラスのスタミナ、Z=ゼウスのパワー、A=アキレスの勇気、M=マーキューリーの飛行力という6つのパワーを持ち合わせた容姿が大人のヒーローに変身できるようになります。

しかし身体は大人になっても心は少年のままであるため、義理の家族となったフレディ(ジャック・ディラン・グレイザー)と一緒になって怪力でいじめっ子を懲らしめたり、稲妻パワーでATMからお金を引き出したりと、スーパーパワーをもっぱら私欲を満たすために使う日々。そんな彼の前にシャザムの力を狙うDr.シヴァナが出現。シヴァナには「七つの大罪」と呼ばれる7人の魔物が付き従っています。人間世界の危機にシャザムは、少年ビリーはどう立ち向かうのか、というのが本作のあらすじです。

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安心感のあるつくり


シャザムが属するDCEUのライバルMCUの人気者 、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のスターロード役クリス・プラットが、SNSへの投稿で「アベンジャーズ:エンドゲーム(自身の関連作)の前売り券を買ったなら、今はシャザム!を観に行ってくれ。息子と観てきたんだけど最高だったぜ。」と賛辞を送ったように、とにかく予告編の印象そのまま、現代に生きる映画好きの少年が映画に求める楽しさを、考え得る限り全部詰め込んだような作品です。

誰もが挙げるでしょうが、シャザムことビリー少年が新しい家族と出会うまでの丁寧な描写や、パワーを得てからフレディと一緒になってスーパーパワーの無駄遣いを連発するところなんかがやっぱり白眉で、ジュヴナイル映画として『グーニーズ』や『ホームアローン』的な、全年齢の観客が感情移入できるオーソドックスな要素と、SNSが当たり前に存在する現代ならではのコメディ要素が高水準でハイブリッドされていると感じました。

個人的に変身後のシャザムを演じたザッカリー・リーヴァイは、彼が主演したドラマ『CHUCK(チャック)』が大好きだったため思い入れが強く、せっかく今を時めくMCUのヒーローの1人になれたと思ったら(ファンドラル役)、『マイティ・ソー:バトルロイヤル』でビックリするくらい雑に殺されてしまったのでガッカリしていたところ、DCにお引越しして本作の大ヒットに恵まれたのでファンとして嬉しい限りです。『CHUCK』も頭はいいけど気が弱い電気屋で働く普通の青年が、うっかりCIAのエージェントになってしまったらというアクションコメディで、雰囲気は少し『シャザム!』と似たところがありますので、映画を気に入った方は是非鑑賞してみてください。

話を『シャザム!』に戻すと、ストーリーは単純明快、複雑な伏線回収なども特になく、また本作のネタバレに抵触する部分、大オチも原作コミックを知らない方から見れば若干「子供っぽい」と思われる向きもあるかもしれませんが、アメコミ原作映画全部が『キャプテン・アメリカ:ウィンターソルジャー』や『ダークナイト』みたいだったら(どちらも大変な傑作ですが)、子供は置いてきぼりをくらってしまうわけで、これからの観客の裾野の広がりを考えても、低年齢層も心から楽しめる本作は、うまいことやってると思います。お子さんをお持ちの方は是非一緒に映画館へ足を運んでみてくださいね。

総評:85点

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