【悪すぎて目が離せない】Amazonプライム・オリジナルヒーロードラマ『The Boys』レビュー

【悪すぎて目が離せない】Amazonプライム・オリジナルヒーロードラマ『The Boys』レビュー

『The Boys』配信開始

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今年の春(2019年4月)、Amazonプライムが年会費の大幅値上げ(3900円から4900円)を発表しましてね。

消費税も鉄道料金も上がって家計は厳しくなる一方だというのに、何シレっと20%以上も値上げしてんだと。

これはあれだな、通販サイトもAmazon一強って感じじゃなくなったし、『プリーチャー』も『有田と週刊プロレスと』もUPされてる分はもう全部観ちゃったし、そもそもNETFLIXだけで動画配信サービスはお腹一杯だし、GAFAとか呼ばれて調子乗ってる(※個人の見解です)アメリカのコングロマリットに鉄槌をくらわす意味でも、次回の契約更改の際にはバシッと三行半を叩きつけてやるぜと、勝手に鼻息を荒くしていたのですが…。

ここにきてアメコミ映画ファン界隈を席巻する、7月に配信スタートしたAmazonプライム・オリジナルドラマシリーズ『The Boys』絶賛レビューの嵐。数字もそれを裏付けるかのように、Amazonオリジナルドラマとしてはトップの再生回数を記録。

それでも、仮にシーズン1を観始めて、うっかりハマってしまった場合、予定しているAmazonとのサヨナラが無期限延期になってしまう恐れありとしばらく我慢してはいたんですが、予告編は超面白そうだし、原作は巨匠ガース・エニスだし、暴力シーンはお盛んらしいしで、なんだか好みの要素がてんこもりっぽかったので、「ちょっとだけなら…。」と1話を視聴してしまったのが運の尽き。

2日間で全8話を一気に観てしまい、おめおめとAmazonの策略に引っ掛かってしまった我が身を憂いているところです。

↓件の予告編。ちょっとネタバレ気味の上、グロいシーンも出てくるのでご注意ください。

↓公式ページのあらすじ

欲と名声にとりつかれたスーパーヒーローたち。非公式に「ザ・ボーイズ」と呼ばれるグループが腐敗したスーパーヒーローたちを倒そうとする。特殊能力を持たない彼らは根性と信念で悪しきヒーローに立ち向かう。

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ホームランダーが最高

主人公ヒューイを演じるメグ・ライアンの息子(ジャック・クエイド)や、エオメル兄さんことカール・アーバン(ブッチャー役)も素晴らしいんですが、このドラマの見どころは誰が何と言おうと、ホームランダー(アントニー・スター)の一挙手一投足です。

『The Boys』の世界には、マーベルやDCの映画・ドラマと同様、スーパーパワーを持つヒーローが存在しています。

このヒーロー達を束ね、地方自治体相手に保安業務を請け負っているのが「ヴォート社」という巨大企業で、このヴォートに雇用されているヒーロー達の中でもトップの実力を持つ7人で「セブン」というヒーローチームを構成しています。予告編をご覧になってお気づきになった方も多いと思いますが、この「セブン」は思いっきりDCのジャスティスリーグをモチーフにしています。

で、この「セブン」、常人の及ばない圧倒的な力を持つ正義のスーパーヒーローチームとして、日夜人命救助や悪党退治にせいを出しているかと思いきや、構成メンバーの悉くが俗物のクソ野郎であるため、売名行為や会社の利益誘導にのみしか力を奮わず、またその力を悪用して私欲を満たしたり犯罪を重ねたり隠蔽したりしている、というわけなんです。

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で、ホームランダーは、この「セブン」のリーダー

見た目でお分かりの通り、スーパーマンをモチーフとするヒーローですが、その能力も本家と同等、強靭な肉体とパワー、飛行能力、そして殺傷力が異常に高いヒートビジョン(目から放つビーム)。たった一人で一個軍隊に匹敵するような力を持ちながら、彼もまた精神に大きな問題を抱えた人物で、外面こそ一応スーパーマン然としており大衆もそれを信じて彼を崇拝しているわけですが、その実、彼の冷酷さ、偽善者ぶりたるや、アメコミ作品のヴィランは数あれど、ちょっと他に類を見ないほど。彼に比べれば、引き合いに出されるであろう『ウォッチメン』のオジマンディアスやDr.マンハッタンなどかわいいもの。彼のコスチュームは、ナチスの制服からインスパイアされて制作されているとのことですが、意味合い的に全く衣装負けしておりません。

彼の具体的な悪行は、ぜひドラマをご覧になって確かめて欲しいのですが、筆者のおススメは第4話。映像配信サービスでないと表現できなかったであろう振り切った邪悪さを披露してくれますので、必見です。

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先が全く読めない展開

このドラマの原作は、前述した通りガース・エニス、ダリック・ロバートソンの同名コミックなのですが、世界観やキャラクター設定など通じる箇所は当然多いものの、ストーリー展開に関してはかなり大きく異なっています。筆者は邦訳されているコミック(既刊3巻まで)は読了していますが、それでも意外な展開が多いので驚いています。登場するキャラクターも多く、多数の視点が入り乱れるオムニバス形式のドラマではありますが、それぞれの陣営、それぞれのキャラクターの目的がはっきりしており、ストーリーテリングのテンポも良いため中だるみすることはありません。

シーズン1がかなり大きな謎を残したまま、言っちゃえばほとんど何も片付かないまま終了しますので、現在撮影中のシーズン2を待ちきれず、原作コミックが気になっている方もおられると思いますが、微ネタバレ(キャラクターの生死は分かってしまう程度)が嫌いじゃなければ、という注釈付きですが、原作を読んでしまっても、ドラマの続きを楽しむのにそんなに問題ないのではと思います。コミックとドラマの違いを見比べながら楽しむのも一興ですよ。

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公開タイミングも絶妙

そんなわけで、続きが気になってAmazonプライムと手を切ろうにも切れなくなってしまった筆者のくやしい思いは置いといて、この『The Boys』、狙ったものかどうか判りませんが、配信スタートの時期も絶妙でした。

2019年7月末といえば、一世を風靡したマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)のフェイズ3最終作となる『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』公開からちょうど一か月後にあたります。

アメコミ映画ファンとしては、10年に渡る「インフィニティ・サーガ」終了に伴い、心にポッカリ穴が開いている頃。またストーリーの構造的に『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』が、スーパーヒーローと、それを際限なく支持する観客をメタ的に客観視してみせた直後。

スーパーパワーを持つ個人に、善悪の天秤を委ねる危険性を描いた『The Boys』のテーマ性が、大衆に響きやすいこれ以上ないくらいのタイミングでした。

Amazonプライムの会員で、同ジャンルを好み、過激なバイオレンス描写がそんなに苦手でなければ、未見はあまりにもったいない。後々「以前と以降」という語られ方をするシリーズになることはほぼ間違いありませんので、是非ホッカホカの旬なうちに鑑賞されることをお勧めします。

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