一般的な経済観念から言って、ロードバイクははっきり「高い買い物」だ。絶対に失敗したくない。
すでにロードバイクに乗っていて、2台目以降の購入、いわゆる「買い増し」「機種変」の人には僕なんかのアドバイスは一切いらないだろう。この記事は「新規」の人に向けて、ちょっと先に始めた先輩として、しかもロードバイクのあらゆる楽しみ方の中でも「モノとしてのロードバイク」に一番関心を寄せてきたものとして、世界のロードバイクフレームメーカーの「個人的なブランドイメージ」を列記する。
ブランドイメージの指標として、「オシャレ度」「レース」「CP(コスパ」「レア度」の4項目をそれぞれ10段階で採点してみた。それぞれの項目には、一切「皮肉」は込めていない。数字が高いほど、その項目での純粋に良いイメージがあると思ってほしい。また珍しければ自然と配点される「レア度」なんて指標が入っているため、合計点の高低にも特に意味はない。
さらに予防線を張っておくが、下記に並べるどのブランドにも熱心はファンは必ずいるし、経験者にこのリストを見せたら不満の一つや二つ必ず出てくるだろう。ブランドイメージなんてものほど、あやふやで人それぞれなものもない。あくまで一人の見解として、話半分に読むことをオススメする。
なお、当記事はフレームメーカーの数が膨大なので「イタリアン編」と「欧米・アジア諸国編」の二回に渡ってお送りする。今回はイタリアに本社のあるブランド「イタリアン編」だ。
コルナゴ(COLNAGO)
- オシャレ度…8
- レース …9
- レア度 … 6
- CP …5
イタリア二大フレームメーカーの一つ。筆者がこのブランドの旗艦モデルに乗っているのでオシャレ度を甘めにつけている。自動車メーカーのフェラーリ社とよくコラボすることから、「自転車界のフェラーリ」と表現されることも多い。素材をカーボンにシフトさせた後も「ラグドフレーム」「ジルコデザイン」と言った通好みの個性は失われることがなかった。ピナレロ社と並んでイタリアンバイクの横綱である。
ピナレロ(PINARELLO)
- オシャレ度…9
- レース …8
- レア度 …6
- CP … 4
有機的で艶かしいデザインが特徴。二大フレームメーカーの片翼。その優れたデザインから日本でも絶大な人気(初心者からも)を誇る。ハイエンドモデルをイタリア国内で、普及ラインを台湾で生産する方式を業界に先駆けて導入したため、「ルック車」との誹りを受けることもあったが、今は大手メーカーはどこもにたようなものだ。常勝集団チームスカイに機材を供給したことにより、一気にレースシーンの中心に返り咲いた。
ビアンキ(Bianch)
- オシャレ度…7
- レース …7
- レア度 … 3
- CP … 9
創業者が、時の王妃に自転車を献上する際、その王妃の瞳の色を模した「チェレステブルー」というエメラルドグリーンの車体がアイデンティティのブランド。マルコ・パンターニがビアンキを駆ってダブルツールを成し遂げたことはあまりにも有名な話。AKIRAの大友克洋さんも確かビアンキに乗っているはず。最近は国内にも直営店が増え、またこのブランドのミニベロやクロスバイクが山ほど走っているため、一時期のカリスマ性のようなものはあまり感じられない。
デローザ(DE ROSA)
- オシャレ度…10
- レース …4
- レア度 …8
- CP …4
遠目からでも明らかに分かる美しい細身のフレーム「ネオプリマート」に代表されるメタルフレームの印象が強いブランドだが、カーボンフレームの玄人評価もかなり高い。弱虫ペダルで御堂筋くんが「キモキモ」言いながら乗っているが、ブランドそのものにキモさは皆無だ。デローザに乗るなら、東京・稲荷町にある「横尾双輪館」という伝説の自転車屋さんで組んで欲しい。憧れのブランド。
ウィリエール(Wilier)
- オシャレ度…8
- レース …7
- レア度 …7
- CP …6
他社とは一線を画す美しいレタリングから、「チャラいブランド」と思われる向きのあるがとんでもない。100年以上の歴史を持つ老舗中の老舗だ。ロードレースからトライアスロンまで、第一線でいぶし銀の存在感を放ち続けている。だが、ピナレロと同様、その華麗なイメージ故に、腹が出たライダーが乗るとかなり面白くなってしまう可能性あり。
チネリ(cinelli)
- オシャレ度…9
- レース …3
- レア度 …7
- CP …5
自転車オールドファンに根強い人気を持つブランド。イタリアンといえばチネリみたいな人もたまにいる。近年はロードレースの印象は薄い代わりに、サンフランシスコのピストチーム「MASH」に代表されるストリートカルチャーのイメージが強く、幅広い自転車ファンの人気を集めている。ラインアップにある「ZYDECO」を見れば判る通り、グラフィックもストリートっぽいのが特徴だ。
クオータ(KUOTA)
- オシャレ度…7
- レース …7
- レア度 …7
- CP …8
21世紀に入ってから誕生した新興ブランド。日本の人気強豪チーム「宇都宮ブリッツェン」がここのミドルグレードモデル「KHARMA」を採用したことで話題になった。新興とはいえレース界での実績には目を見張るものがあり、ロゴの近未来的イメージと併せてまさしくロードバイクの「ネクストジェネレーション」を体現するブランドだ。
ジオス(GIOS)
- オシャレ度…6
- レース …6
- レア度 …3
- CP …8
ビアンキ同様、「青」というブランドを象徴するイメージカラーがある。1970年代は他の追随を許さない戦績を誇った老舗ブランド。カーボン化の波に乗り遅れたのか、あえて乗らなかったのかは判らないが、素材としてクロモリにこだわり続けたことで有名。不幸なことに日本では、熱烈なファンもいる代わりにアンチも多く、街乗りの廉価モデルも普及していることから全体的に地味な印象が拭えない。
カレラ(CARRERA)
- オシャレ度…8
- レース …6
- レア度 …8
- CP …6
こちらはアルミバイクの印象が強いブランド。大きく湾曲させたトップチューブが印象に残る「PHIBRA」というモデルが有名。創設者のダビデ・ホイファーバはプロ通算30勝を誇る名選手であり、パンターニやベッティー二もかつてはカレラで数多くの勝利を勝ち取った。玄人受けするブランド。
デダチャイ ストラーダ(Dedacciai STRADA)
- オシャレ度…6
- レース …7
- レア度 …9
- CP …9
有名チューブメーカーであったデダチャイ社が立ち上げた自社ブランド。長年に渡るノウハウの蓄積により新興ブランドとは言い難い完成度を立ち上げ当初から誇った。フレームを素材の時点から設計できる強みで、革新的なフレームデザインを行なっている。当然ながらCPは高め。
コロンバス(COLUMBUS)
- オシャレ度…5
- レース …7
- レア度 …8
- CP …10
印象としてはデダチャイストラーダの先輩。バイク用チューブの大手ブランドであったコロンバスは、スチール製バイクメーカーにとってなくてはならない存在だったが、近年になって自社でもフレーム生産を開始。スチールだけでなくカーボンフレームもリリースしている。素材を聞くと信じられない程のCPを誇る。
今回のレビューにおいては、トマジーニやズッロ、カサーティなど、いわゆるスチールフレームで名を馳せるブランドは扱わなかった。1台目にこれらをチョイスする慧眼の持ち主にはあえてアドバイスなど必要なかろうという思いからだ。あえて同じように採点したとするならどれもデローザと似たような評価になったろう。
続く【欧米・アジア諸国編】もお読み頂けたら幸いである。
(文・イラスト:アクトンボーイ)