GPSと一般相対性理論
速く動くモノの時空は縮む。
また、質量の大きいところでは時間が遅れる。
この一般相対性理論が正しいことを証明する実例がGPS機能を担う人工衛星だ。
人工衛星は高速度で地球上空を回っている。理論上、速度が速ければ速いほど時間は遅れるはずだ。
しかし、人工衛星は地上から2万km離れたところを飛んでいるので地球の重力の影響が小さくなっている。
力の綱引きの結果、人工衛星に搭載された時計よりも、重力の大きい地表面に置かれた全く同じ時計の方がゆっくり進むこととなる。
この場合、重力の影響の方が大きいというわけだ。
GPS機器が指し示す座標の数値が、実際より少しでもズレた場合、大事故に結びついてしまう恐れがあるため、地表面上の時計に対して進み過ぎてしまう人工衛星の時計は、アインシュタインの数式通りに休むことなく補正を行って、地表の時計と同期するようになっている。
我々がスマートフォンで、地図アプリなどを使って自らの位置を認識できるのも、アインシュタインのおかげというわけだ。
GPSとは
Global Positioning Systemの略語である。
アメリカが運用する衛星測位システムであり、計30基の衛星がそれぞれ約12時間で地球を一周している。
元々軍事利用が目的であったため、これを嫌う他の大国は独自のシステムを構築している。
当然彼らはGPSとは言わない。
例えばロシアはGLONASSであり、インドはIRNSS。欧州のシステムはGALILEOという。
日本も本目的に適う衛星を複数持っているが、同盟国アメリカのシステムに相乗りしている。
故にアメリカと同様に位置情報システムをGPSと称している。
日本の衛星は、システム上補完の役割を果たしている。
水星の近日点移動
太陽系の惑星の中で水星だけが特異な軌道を描く。
他の惑星の軌道はいつも同じであるのに、水星の軌道だけが時と共に少しずつズレていくのだ。
これを「近日点移動」というそうだ。ちっとも近くはないけれども。
もとい、このズレの理由の大部分はケプラー=ニュートンの理論(後日紹介)で説明できるのだが、どうしても一部が不明のまま、説明として不十分となってしまっており、長い間科学者たちを悩ます疑問であった。
それが一般相対性理論の登場により、うまく説明しきれるようになったのである。
ざっくり言ってしまうと、太陽の重力場、つまり空間の歪みが水星の軌道に影響を及ぼしている、ということ。
金星や、もちろん他の惑星にも太陽の重力場の影響はあるのだが、これらは観測不能なくらい微小なので無視しうるということらしい。
水星は太陽にとても近いのでこういった現象が観測されてしまうのである。
このことはアインシュタインの生存中に確認された。