チバニアンとは
武漢肺炎(新型コロナウイルス)が地球規模で蔓延しはじめた2020年1月。
淀んだ雰囲気に射す一条の光のように、千葉県民および日本国民にとって嬉しい知らせが届いた。
これまで欧州発の名前が席巻していた地質年代に「Chibanian(チバニアン)」が正式に加わることになったのだ。
千葉県市原市を流れる養老川沿いの、高さ6メートルの崖にある一部地層が「Chibanian」と命名された。
その地層は地球で数回起きた地磁気の逆転現象のうち、一番最近77万年前の逆転の証拠を極めて明瞭に残しているのだ。
この明瞭さが故に、国際会議にて、史上初めて日本語名が採用されたという次第。
地磁気の逆転
地球内部のコアは鉄が溶けたような状態の為、あたかも発電機のように地磁気を発生し、その磁力線が地球の2つの極を結んで磁場をつくる。
つまり地球は巨大な磁石なのである。
現在は北極がS極で、南極がN極(テストに出るよ、間違えないようにね!)であるが、20~30万年に一度くらいの感覚で逆転(ポールシフト)しているのだ。
77万年以前は、北極がN極で南極がS極であった。
何故逆転現象が起こるのか、未だよく分かっていないが、コアとマントルの境界辺りで起こる状態の変化が、逆転をもたらすのではないかと言われている。
地球を覆っている地磁気は、地球にとって、あたかもSF映画などに登場するバリアの役割を果たしてくれる非常に有難い存在だ。
地磁気は太陽から機関銃掃射のように絶え間なく降り注ぐ粒子攻撃や、宇宙から飛んでくる有害な放射線を遮断してくれている。
そもそも地磁気逆転現象を最初に仮説として提示したのは、フランス人物理学者ベルナール・ブリュンヌ(Bernard Brunhes)であり、その説を証明したのが日本人物理学者の松山基範である。それぞれ1906年、1929年のことであった。
この2人の功績を讃えるべく、一番新しい地磁気逆転現象のことをブリュンヌ・マツヤマ・リバーサル(Brunhes-Matsuyama Reversal)と呼んでいる。チバニアンなる日本語名称が生まれたのも、松山博士の功績が影響力を発揮したのかもしれない。
極の逆転が20~30万年の間隔で起きると書いたが、じつはチバニアン地層が示す77万年前に起きたブリュンヌ・マツヤマ・リバーサルが最後のものだから、ここのところ珍しく現象が起きていないことになる。
それでだ、問題は最近地球の磁気が弱くなっていることだ。
学者は地磁気の逆転がもうすぐ起きると睨んでいる。もうすぐ、とは何時ののことなのか?それはよく判らない。
逆転現象が起きるとどうなるか。
まず一時的にしろ地磁気の防護壁が薄くなるので、紫外線の量が増えて生命体を攻撃するだろう。
加えて現代社会の重要な基盤となっている電子空間に影響が及ぶだろう。通信機器、人工衛星、飛行機、自動車などの電子機器を搭載した機械に大きな問題が生じるかもしれない。
地質年代というのは地球が誕生した46億年前から、数千年前までの気が遠くなるほど長い時間を、生物の繁栄や絶滅を基準に区分したものである。
従って、ここ数千年の人間の歴史(有史時代)というのは長い地質年代のわずか100万分の1にしかすぎない。1ppmだ。
だか、この100万分の1にしか過ぎない時間で、人間は宇宙の神秘について解明を進めるほどに発展した。
次の100万分の1の間には、地磁気の逆転による障害など軽々とクリアして、地球以外の惑星はもちろん、太陽系の外に出てコロニーを造っていることだろう。