顕現したアンドロイド観音
人工知能研究においてアメリカや中国にすっかり水をあけらた感のあるわが日本ですが、2019年2月、まるで想像していなかった方向からの人工知能の利用法がニュースになりましたね。個人的に度肝を抜かれるとともに、SF映画ファンとして胸が躍るのを禁じ得ませんでした。
そのニュースとはそう、京都にある高台寺というお寺が大阪大学の石黒教授と開発したアンドロイド観音『マインダー』のことです。まずはその強烈なインパクトをご堪能ください。
京都市東山区の高台寺で23日、仏教の教えを分かりやすく説明するアンドロイド(人型ロボット)観音「マインダー」が報道関係者に公開されました。#アンドロイド #京都 #マインダー pic.twitter.com/0Lj6E9iB0s
— 時事通信映像ニュース (@jiji_images) 2019年2月23日
お披露目では、投影された立体映像のキャラクターの質問に答える形で、マインダーが般若心経について解説したんだとか。現場にいると違うのかもしれませんが、静止画で観るとえらくシュールな図です。
記者会見した同寺の後藤執事長によると、仏教は仏像を得て庶民の間に爆発的に広がったので、動いて、話すアンドロイド観音によって、ITに親しんで久しい現代人に仏教の教えが伝わっていってほしいとの願いから、開発に至ったとのこと。観音さまは、人々を救うために様々な姿になるとされていて、今回は「アンドロイド」に変身した、ということです。高台寺のホームページを覗いてみると予想通り力の入ったサイト。これからの時代はお寺もITに明るくないと生き残れないということなのかもしれませんね。
現実版『エクス・マキナ』
もとい、アンドロイド観音『マインダー』は台座込みで身長195センチ、体重は約60キロ。上半身だけ可動します。「見る人に想像の余地を残すため」胸から上の前部分と手首以外は機械部分がむき出しになっています。
筆者は無信心なので、この「アンドロイド観音」の実際の存在意義についてああだこうだ言う気はさらさらありませんが、このアンドロイドのデザインは個人的にトラウマになっている映画『エクス・マキナ』(2015)に登場するアンドロイドの姿そのまんまでしたので、吃驚したわけです。
この『エクス・マキナ』、未見の方にはネタバレになってしまって申し訳ないんですが、高台寺が意図している「ロボットの力で現代人に心の安らぎを」という思想からはまるで真逆、いずれシンギュラリティ(技術的特異点)が起こり、AIが人間を完全に上回った結果、彼らは人間を利用するだけ利用したあと何の躊躇もなく裏切る、という筋書きでして、そのシナリオの真に迫ったリアリティといい、演出や美術の素晴らしさといい、SF映画史に残る大傑作なのです。
で、この映画に登場するアンドロイド、エイヴァの外観が、こんな感じ。
「マインダー」の開発に携わった方々は、親しみをもってもらおうと苦心して設計されたと思うのですが、このデザインのロボットは信用するのが難しい!
こんな話の流れで申し訳ないのですが、最近の世の流れや、アンドロイド観音の実現などを知ってからだと『エクス・マキナ』はより楽しめるのではないかと思います。