【お母さんアレ買って!】実写映画史上最もクールなバイク『ダークナイト』のバットポッドについて

【お母さんアレ買って!】実写映画史上最もクールなバイク『ダークナイト』のバットポッドについて

バットポッド実物

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東京コミコン2019、無事閉幕しましたね。

今年は予定されていたゲストの相次ぐ来日キャンセルで、一時はどうなることかと危ぶまれましたが開催まで一カ月ほどとなったところで急遽クリス・ヘムズワースやジュード・ロウの出演が決定、結果例年以上に盛り上がったとか盛り上がらなかったとか(現時点で動員が正式発表されていません)。筆者の職場の同好の士はルパート・グリントとの撮影会に参加、週が明けた現在も余韻冷めやらぬといった風情で仕事が手につかない様子です。

筆者も例年通り初日の11月22日(金)に遊びに行きましたが、玩具マニアの私の今回のお目当てはコレ。

クリストファー・ノーラン監督『ダークナイト(2008)』及び『ダークナイト・ライジング(2012)』に登場したバットサイクル、通称「バットポッド」の実物です。

ジョーカーを演じたヒース・レジャーの怪演で有名な『ダークナイト』ですが、この映画について語る際、ジョーカーの次に洋画ファンの口の端に上ることが多いのがこの「バットポッド」ではないでしょうか。本稿では、2008年の映画なんでかなり今さら感はありますが、この「バットポッド」について軽く掘り下げてみたいと思います。

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バットポッド誕生の経緯

映画『ダークナイト』のプリプロダクションにおいて、ノーラン監督はバットマンに、観客の度肝を抜く斬新な乗り物を与えたいと考えていました。(スターウォーズ続三部作の製作陣も同じ気概が欲しかったですね。)そこで『インソムニア(2002)』以降全てのノーラン作品でプロダクションデザイナーを務める盟友ネイサン・クロウリーをLAにある自らのガレージ(兼製作スタジオ)に招いて、デザイン作業をスタートします。ちなみにこのネイサン・クロウリーは、『バットマン・ビギンズ(2005)』で初登場するバットヴィークル、「タンブラー」をデザインした人です。

「とにかく実際に作りながら考えよう。」というコンセプトの元、ガレージにあったありあわせのパーツを切ったり貼ったりしながらデザインを始めた2人。ほどなくして完成するプロトタイプ。こりゃカッコいいもんが出来たぞと、ホクホクの2人。

この原型を元にして映画撮影で実際に使うプロップの製作を依頼するために、今度は特殊効果コーディネーターのクリス・コーボールドをガレージに呼びつけます。(ちなみにこの方も、007シリーズで英国アカデミーの視覚効果賞に何度もノミネートしている凄い人です。)

ガレージに到着したクリス・コーボールドはしかし、監督とネイサン・クロウリーがつくったバットポッドのプロトタイプを一目見て硬直してしまったそうです。

後のインタビューでクリス・コーボールドは、「正直2人は頭のネジがぶっ飛んでると思った。これを実際に動かすだって?どこに駆動系を置けばいい?それにこの横にデカいホイール、どうやって(コーナーを)曲がるんだ?」と語っています。

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イギリスに帰国したコーボールドはしかし、自分のスタッフと試行錯誤を重ねた結果、監督とネイサン・クロウリーが作ったプロトタイプと見た目がほぼ同じ状態の、実際に走行可能なプロップを仕上げてみせます。ノーラン監督をして「絶対無理だと思った。」(おいおい)という高難易度のミッションでした。

クリス・コーボールドの解説によると、ノーラン監督とネイサン・クロウリーが実際にオートバイに乗ったことがなく、またオートバイの機構についての知識が全くなかった為、バットポッドはオートバイのような形をしていながら、基本的な設計においてオートバイを一切踏襲していなかったということが、逆に幸いしたそうです。

こうして実際にドライバーを乗せて走ることが出来る「バットポッド」が完成したわけですが、コーボールドが最初に懸念した通り、操縦が滅茶苦茶難しいという問題だけは解決されずに残りました。

「バットポッド」を操縦するには、ドライバーは上半身をほぼ水平に前に傾け、手首ではなく肘から肩を使ってハンドル操作をする必要があります。聞いてるだけで恐ろしいマヌーバリングシステムですが、実際この操縦をマスターできたのはフランス人のスタントライダーであるジャン・ピエール・ゴイだけでした。彼は映画『ダークナイト』の撮影期間中、あまりに癖のあるこのマシンの操縦感覚を忘れないために、普通のオートバイに乗るのを止めていたそうです。熟練のライダーでさえこうなのに、『ダークナイト・ライジング』においていきなりコレを乗りこなしてみせたアン・ハサウェイはとんでもない運動神経の持ち主ということになりますね。

 

冗談はともかく、実走版「バットポッド」は難点の多いプロップとなってしまいましたが、このゴイさんがバットスーツを身に付けてコレを駆る姿があまりにカッコよかった為、製作陣はこの乗り物を撮影に使うことを諦めなかったのだそうです。

「バットポッド」は撮影用に全部で6台が製作され、その殆どが撮影中に壊れてしまいました。このマシンに使用されたエンジンがどこ製の何由来のものかは明らかにされていません。またこのマシンの走行音には、テスラ社の電気自動車のエンジン音が加工されて使用されています。

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バットポッドのギミック

”Self destruct sequence initiated. Goodbye.

というアナウンスの後、前述のバットモービル「タンブラー」の前輪部分が分離変形する激アツな機構の「バットポッド」。当然ながらプロップにおいては、この変形機構はオミットされています。また、「バットポッド」といえば前後についたホイールが同時に軸ごと90度回転することによる直角走行が代名詞ですが、大変残念ながらこのサスペンションシステムも、映画の中だけのお話の様です。

武装は40mmのブラストキャノンと50口径の機関銃。ブラストキャノンって普通の大砲と何が違うのか調べてみましたがよく分かりませんでした。その他にアンカー射出装置が装備されています。

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いかがでしたか?

ダークなヴィジュアルと、ヘビーなストーリー展開がとかく取沙汰されがちな『ダークナイト三部作』ですが、筆者としましては今回ご紹介した「バットポッド」のような面白カッコいいガジェットが沢山登場した幸せなシリーズでした。

これからもアメコミヒーロー映画は沢山製作されていくと思いますが、製作陣の皆様におかれましては、どうかガジェットにこだわり抜いて、玩具マニアの我々も楽しませて欲しいと願うばかりです。

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