※該当作品のネタバレを含みます。
シリーズ史上最多のキャラクターが登場し、ある種「お祭り」的な要素も強かった映画『アベンジャーズ:インフィニティーウォー』。作中ほとんどの場面で、宇宙や架空の都市が舞台となったため、映画の大部分がスタジオに設営されたグリーンバックのセットの中で撮影されました。
そんな作品の中で、ワンダ(エリザベス・オルセン)とヴィジョン(ポール・ベタニー)2人の、ブラックオーダーとの遭遇から、キャプテン・アメリカ登場までの一連の「エディンバラ・シークェンス」は、そのほぼ全てが実在する街並みや建造物を利用した屋外ロケにより制作されています。
エディンバラというロケ地が持つ重厚な雰囲気のみならず、撮影を行った建物の構造を最大限に利用した演出により、この一連のシーンは『インフィニティーウォー』という映画全体の格調をも押し上げ、シリーズを象徴する名場面の一つとなりました。
本稿では、これらの場面で使用された実在のロケ地を作中起こったバトルの順番にご紹介します。
こちらの筆者謹製の雑な概念図で位置関係を念頭に入れながらお読みください。
Battle1. コックバーン通り
大通りの側道、後ほど登場するウェイバリー駅への曲がりくねった坂道に、可愛らしい商店が軒を連ねるコックバーン通り。きつめの傾斜が古い街並みの趣を引き立たせる観光客に人気の撮影スポットでもあります。
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ヴィジョンとワンダが、ニュースをモニターで見ていたケバブ屋さんは、駅側ではなく、ハイストリート(ロイヤルマイル)側に位置しています。概念図の赤いバツ印のあたりです。
後からグサッときたブラックオーダー襲撃後、ふっ飛ばされたワンダが突っ込んでいった通りの反対側の店もそうですが、このケバブ屋さんは撮影のため作られたセットです。現在は「ミス・ケイティ―のカップケーキ」というお菓子屋さんが営業しています(ワンダが突っ込んだ店はオーガニックカフェのようです)。
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ともあれ反撃に成功したワンダは、ヴィジョンを抱えその場を脱出します。
Battle2. ロイヤルマイル~市議会広場
飛んで逃げたワンダが着地したのは、襲撃場所から半ブロックほど離れたロイヤルマイル沿い、市議会議場広場にあるアレクサンドロス大王と愛馬ブケパロスの銅像の前でした。ちなみにロイヤルマイルというのはエディンバラ城から宮殿を1マイル(1.6kmくらい)で結ぶエディンバラで一番有名な石畳の通りです。東京でいうところの、行幸通りとか丸の内仲通りみたいなもんとお考え下さい。
議会広場前にあるヴィクトリア様式のアーチの下で、ヴィジョンの傷を癒そうとするワンダですが、ここで敵に追いつかれてしまいます。アーチの下で戦いを繰り広げるプロキシマ・ミッドナイトとワンダ。距離をとれば無敵のワンダも、接近戦では分が悪かったようです。
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Who can guess how long the Royal Mile is? The answer is not as obvious as you might think #Edinburgh #Scotland #RoyalMile #Quiz #SANDEMANsTours pic.twitter.com/nAxW1Gca7f
— NEW Edinburgh Tours (@neweditours) 2018年12月13日
Battle3. 聖ジャイルズ大聖堂~メルカット・クロス
ヴィジョンはワンダから敵を引き離そうと、当たったり跳ね返ったりしながらコーヴァスもろとも通りの反対側、巨大なステンドグラスで有名な聖ジャイルズ大聖堂へ。街のシンボル、カテドラルの尖塔を軽めにぶっ壊したあと、教会の大屋根の上で敵と対峙します。
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ちなみにこの見事な大屋根、現在現地では「ルーフトップツアー」に参加することで、一部ですがアベンジャーズ気分を味わうことができます。ツアーの開催は週末のみ。費用は一人6ポンド(850円くらい※2018.12.17時点)。ちなみに大聖堂への入場は無料ですが、撮影は寄付を行ったステッカーを胸に貼っておかないとNGです。ステンドグラスを「映え」たい方はご注意ください。
一方のワンダも敵の攻撃に飛ばされる形で、カテドラル側へ。大聖堂の足元、スコットランド王室のシンボル・ユニコーンのモニュメントが印象的な広場、メルカト・クロスにてファイトを続けます。メルカト・クロスのすぐ近くには、自由経済の父、「国富論」のアダム・スミスの銅像も建ってます。
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尖塔にうつるシルエットでヴィジョンの危機に気付いたワンダは、プロキシマをパワーで巴投げしたあと、大屋根へジャンプ、「石よこせー!」と夢中になってるコーヴァスを窓ガラスを突き破ってカテドラル内へぶっ飛ばします。さすがアベンジャーズ最強女子。
ちなみに結構気軽に壊してますが、セント・ジャイルズ大聖堂は世界遺産です。
Battle4. エディンバラ・ウェイバリー駅
ワンダの活躍で、どうにか隙を作った二人。戦場から大きく離脱しようと再び飛び立ちますが、妖怪「石おいてけ」の女性の方の狙撃を受け、墜落してしまいます。落ちた先は、イギリスで二番目に大きいエディンバラ・ウェイバリー駅。空港やロンドンへのハブになっている駅で、これも東京でいうと、上野駅とか品川駅とかそのあたりになります。
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駅のシンボル、2012年にガラスの葺き替え工事が終わったばかりの屋根をまたしても突き破って、地上のプラットホームに落下するワンダとヴィジョン。巨大すぎる駅舎に、最初はそれとわからないほどです。ちなみに、二人が落ちたところは2番線ホームです。
私見ではこれには理由がありまして、この後に続くキャプテン・アメリカ登場の際、キャップがキリッと立っていた場所が1番線ホーム、ウェイバリー駅に何本もあるホームの中でも数少ない、壁を背にできる場所なんですね。キャップは暗がりからおもむろに登場しないといけないし、演出として間に通過列車も通さなければならないので、消去法でこの2番線ホームが戦場になったと推測します。
いかがでしたでしょうか。
アクション映画では、使用されたロケ地をよく知る観客がみると、カットの切り替えにキャラクターが瞬間移動しているなんてことは、凄くよくあることなんですが、地図を片手にこうして見ていくと、この一連のシーン移動は全く不自然さのないつなぎかたになっていることが判ります。『インフィニティーウォー』を手掛けたルッソ兄弟は、縦方向の立体的な空間を活かした見事なアクション演出で知られていますが、その演出は、空間のリアリティを重要視することによって生まれているのだということが判ります。
こんなマニアックな話誰が読むのかと心配になりますが、実際に現地スコットランドに赴かれた際の「聖地巡り」の一助として、もしくはGoogleストリートビューのおともに、少しでもお役に立てたら幸いです。