公式ヴィジュアルに偽りなし
青く晴れ渡った空の下、アメリカ南部の薄黄色に染
舞台は1960年代初頭のアメリカ。ニューヨークに暮らす主人公のトニー・リップ(ヴィゴ・モーテン
現在でも根本的には解決されていない問題ですが、当時のアメリカ南部、特にディープサウスと呼ばれるエリアは、黒人差別が非常に激しい地域で、いくら著名人と言えど黒人は身の危険に晒されることも多く、ツアー中、ドン・シャーリーも行く先々で様々な差別絡みのトラブルに巻き込まれるのですが、それをトニーが持ち前の機転と腕っぷしで道を切り開いていく、というのが大まかな話の筋です。
生まれも育ちも考え方も、何もかも違う二人が、8週間の旅を通して相互理解を深め、友情を育んでいく、というと通り一遍のロードムービーと同じような印象を持たれるかもしれませんが、本作は「人種差別」というシリアス極まりないテーマを扱いながら、全体をあえて軽めに、コメディ要素多めで描くことで誰にでも楽しめる映画として成立させています。鑑賞後、同じように考えた方が多いのではと思いましたが、2011年のフランス映画『最強のふたり』と雰囲気が非常によく似た映画です。
秀逸なシナリオ
※以下ちょっとネタバレしています。ご注意ください。
この映画は冒頭で示されている通り、実話が元になっており、主役の二人は実在の人物なのですが、何といってもトニーの実の息子、映画にも登場するニック・バレロンガが脚本家としてクレジットされており、そのことが映画の味わい深さに一役買っている気がします。
というのも、まず劇中の印象的なエピソードの中の一つに、トニーが立ち寄った先々で愛妻に手紙を送る、というものがあります。無学なトニーが苦心しながら書いているのを見かねたドン・シャーリーが途中から手伝い、最終的には完全に原稿を担当するという微笑ましいシーンなのですが、トニーの息子がそう語っている以上、トニーが旅先から妻に手紙を送り続けたことは事実としてあったのかなと。また、何より、トニーとドン・シャーリーがこの旅を通じて友情を育み、かけがえのない友達同士になったということもまた、本当なのでしょう。
トニーの家族思いな面、そして2人の友情。彼らと親しかった人間がストーリーに携わっているということが、映画において非常に重要なこの2つの要素を現実のものとして傍証し、批判にあるような「ご都合主義」というだけでは片付けられない真実味を作品に与えていると思います。
総評:95点(観た後ケンタッキー・フライド・チキン食べたくなる指数100%)