ネタバレ注意
本稿は劇場映画『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』の個人的な感想文です。映画についてのネタバレが随所に含まれております。本稿をお読みいただけるのであれば、原則映画鑑賞後を推奨いたします。
みなさま、ごきげんよう。
2019年第1回ゴジラ検定中級「不合格」者の アクトンボーイと申します。
ホントに人間背伸びはするもんじゃありませんね。受験前は、そこらへんを歩いている主婦や小学生よりはずっとゴジラのことを詳しいつもりで(前記事には殊勝なこと書いたりしてましたが)内心あわよくば中級くらい余裕で受かるんじゃないかなんて思ったりもしていたのに、結果は推定合格ラインとされた70点に5点足らないという…もっと全然ダメダメだと笑い話にもなるんですが、微妙に惜しい感じも逆に情けないですね。
そんなわけで、本稿は「ゴジラ検定中級」に受からないくらいのゴジラリテラシーの持ち主が書いているということを予めご承知頂き、文中に散見する齟齬や誤りなどは多めに見つつお読みいただけると幸いでございます。
かったるい人間パート
本作はですね、元も子もない例え方をするとアメリカン・プロレスのような映画です。
事前に発表されているメインイベントは怪獣王ゴジラ対宇宙怪獣キングギドラ。2004年の『ゴジラ FINAL WARS』以来15年ぶり(厳密にはカイザーギドラでしたが)の再戦となる因縁の対決、怪獣チャンピオンのベルトをかけたタイトルマッチです。
で、本作の物語は、このメインイベントをいかに盛り上げるかというアングル(※プロレス用語・戦いのための筋立てのこと)にあたるわけで、カイル・チャンドラーや渡辺謙、チャン・ツィーといった錚々たるキャストがしかめっ面しながら、結構な尺を使ってヒューマンドラマを繰り広げるのですが、「もうそういうの直接の前作に当たる『ゴジラ』(2014)でも『ガメラ3邪神覚醒』(1999)でも、なんなら畑違いのアメコミ映画でも散々見たぜ。」って言いたくなるような取ってつけたサイドストーリーを、登場人物がそれぞれどんな目的で動いているのか非常に判り辛い、言っちゃえば演出的につたない感じで延々と見せられまして、正直映画の前半から中盤にかけては激しく襲ってくる眠気を堪えるのに必死でした。
脚本家の方に言いたいのですが、もうこの手のジャンル映画で、戦いに巻き込まれて家族を失って見当違いの逆恨みをしている人物や、離れ離れになった家族の再会などを描くのは辟易しますんで当分の間控えて欲しいです。
本作でいえば、宇宙からの外来種、圧倒的な破壊者ギドラに対して、狂ってしまう生命のバランスを調停するべく立ち上がる地球の守護神的な存在としてのゴジラ、という図式で十分アングルとして成立していますので、物語は怪獣メインで回しても良かったのかなと。モスラがゴジラの味方をする理由とか掘り下げてね。
てなわけで、キングギドラの復活シーンや、ラドンと戦闘機のドッグファイトなど、結構好きなシーンはところどころあっても終盤に差し掛かるまでは「この映画合わないかもな。」とちょっとガッカリしながら鑑賞していました。
異様な盛り上がりをみせるクライマックス
一敗地に塗れたベビーフェイス(善玉)が、再起しパワーアップして再戦に挑む。
アングルとしては定番の展開ですが、モスラ孵化→ゴジラ瀕死の状態で発見→芹沢博士が身を挺してゴジラ再生→海底からゴジラ大復活の流れは、もしかすると使用されている音楽のせいかもしれませんが、非常に熱い演出の連続で、眠気があっという間に吹っ飛びました。
「僕はこれが観たかったのかもしれない。」
そんなことが脳裏をかすめて間もなく始まるラストバトル。
ゴジラ対キングギドラのメインイベントは、お互いの長所を存分に引き出しあう見ごたえのある試合。幾筋もの竜巻に囲まれて稲光を放ちながら見栄を切るギドラに対して、接近戦で重い一撃を加えようと突進するヘビー級ボクサーのようなゴジラ。絵的に対照的なのも良かったですね。対決が夜ばかりで、バトルが何が何やらよく見えなかったという方もいるみたいですが、ゴジラの背ビレの青白い光や、ギドラの雷光を映えさせるためには背景は黒っぽい必要がありますので、個人的には仕方なかったのかなと思います。
途中乱入してくるラドンに、モスラが立ち向かい2対2のタッグマッチになるところも工夫がありました。ゴジラと並んでモスラとラドンは「東宝三大怪獣」なんて呼ばれて長い歴史をもつ怪獣なんですが、言われてみるとこの2体(ラドンと成虫モスラ)が戦ったところは観たことがありません。どちらが強いのか、こちらも興味深い対決で、その決着や決まり手も納得性が高いものでした。
最終盤、またちょっといらない感じ(私見です)の人間パートがあってからのゴジラの最終形態。日本のゴジラファンは歓喜したであろう『ゴジラVSデストロイア』由来と思われるあの姿。ゴジラ検定不合格者の小生ですが、この映画は勉強の為にたまたま鑑賞済みでしたので、「おお、バーニングゴジラ!」とちょっと感動しました。
最後ライオンキングみたいなエンディングが賛否別れているみたいですが、僕としてはまたうんざりしていた人間パートの愁嘆場を改めて見せられることなくさっぱり終わって頂けて、その上クレジットの終わりに中島春雄さんの写真でホロリとさせて頂いて、前半部のかったるさを差し引いても満足度の高い映画でした。
プロレスに例えましたが、メインイベントが盛り上がれば前座がどんなにしょぼい試合をしようが、興行は成功だったと言えるように、本作『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』もゴジラ映画として傑作の一本に数えてもいいのだと思います。
総評:80点