ルネサンスのへそ
ルネサンスの中心地はフィレンツェ。
フィレンツェときたら大聖堂(ドゥオーモ)。そして大聖堂と言えば、巨大なドームが一番興味を引く。
このドームは煉瓦を積んだ二重構造となっているのだが、15世紀に建設された時の記録から、驚くべきことに建設に際して足場を全く使っていないことが判明している。
ドームの外径、およびドーム部の高さは共に50メートルは優にある。建物そのものの基礎から測るとその高さは100メートルにも及ぶ。
ドーム建造の謎
ドームは当然のことながら上に行くにしたがって内側に倒れこむように傾斜している。
足場もないのにどうやってそんな高さに煉瓦を積んだのか?
もちろん完成してしまえば、煉瓦に設けられた微妙な角度のおかげでドームはなんの支えがなくても自立していられる。
しかし、建設中は?大工さんたちは、何十人かで重なって肩車でもしたのか?
ドームのつくりかた
答えを言うと、ドームの基底部から少しずつ積み上げた煉瓦の壁がある高さに達しようとしたときに、ドームの直径と同じ大きな木製のリング状のフレームを作って、それに煉瓦の重量を委ねる。
高さが増すに従い、また木製リングを設ける。これを繰り返すのだ。
そうやって出来上がった一つのドームの外側にもう一つドームを設ける。これで二重殻は完成する。
内側の殻が、外側の殻を支えているのである。
ドームの建築者
足場なしドームの設計者、ブルネッレスキは建築分野の経験が浅かった。
その代わりにローマ時代の建築について詳しかった。
それだけ既成概念にとらわれない、常識を超えた方法を思いつくことが出来たのであろう。
内側の殻と外側の殻の間の、空間は今、観光客が頂上の展望台に至るための通路として機能している。
私は、1994年の3月に登ってみた。
そこからはフィレンツェの街並みと、ところどころに糸杉を配したトスカーナの伸びやかな丘陵が臨める。
値千金の眺めである。
大聖堂の建設期間は140年である。
そして実際行ってみて、ドーモでかいと思ったドームは世界最大の石積み建築なんだそうだ。
ルネサンスという華麗なる大花は、それ以前に起きた悪名高き十字軍遠征部隊の兵站を、イタリアの都市国家群が手伝う過程で入手したあぶく銭を栄養分として開花した。