【ピーター・パーカー寝すぎ問題】『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』癒しのオランダシーンを無駄に検証

【ピーター・パーカー寝すぎ問題】『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』癒しのオランダシーンを無駄に検証

ネタバレご注意

本稿は現在(2019年7月中旬)劇場で大ヒット上映中の『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』中の出来事について解説しています。主旨はどうでもいい内容ですが、このシーンに至る経緯を語る上で物語の核心に激しく触れています。本稿は映画を鑑賞済みの読者の方に向けた記事です。ネタバレはもうすぐこの下の項から始まってしまいますので映画未見の方はご注意ください。

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癒しのオランダシーンとは

映画中盤、事件の真相に気が付いたピーター・パーカー(トム・ホランド)は、ニック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)に警告すべく、プラハからSHIELDの本部があるドイツのベルリンへ急ぎます。危険を察知し迎えに来たフューリーと無事合流、本部基地で反撃の算段を立てようかというときに、フューリーに扮していた擬態を解き正体を現すミステリオ(ジェイク・ギレンホール)。

彼が次々に作り出す幻覚に翻弄され、友人や愛する人の情報を敵に提供してしまった挙句、線路に誘導されて通過中の高速列車と激突させられてしまうピーター・パーカー。ミステリオはピーターの死を確信しその場を去りますが、スーパーパワーを得ているピーターは大ダメージは負うものの命に別状はなく、そのまま走行中の列車の車内にエスケープし、シートに倒れこむと気を失ってしまいます。

傷ついたピーターが目を覚ましたとき、何故かそこはオランダ国内の留置場。

ニコニコと気のいい(だけど捕まってる)サッカーのオランダナショナルチームのサポーターたちに囲まれて、困惑するピーター。とにかく急いで仲間の下へ行かなくてはならないと、牢屋の鍵を壊して脱出。開いた扉をそっと閉め自分たちはそのまま中に納まり続ける同房者。

看守はといえばピーターのステルススーツのマスクを被ったまま、電話で「ナイト・モンキー捕まえたぜ。」みたいなことを報告中。余裕で留置場を出たピーターは、右も左もわからぬまま、村のマーケットでこれまた人のよさそうなおじさんに携帯電話を貸してくれないかと頼むピーター。見ず知らずの人間に二つ返事で自らのスマホを快く差し出すおじさん。

「ここはどこですか?」と尋ねるピーターに、「Broek op Langedijk」と村の名前を答えるおじさん。発音できないので、おじさんに電話口のハッピーに向けて発音してもらうピーター。

あっという間にチューリップ畑にジェットで飛んでくるハッピー。ホッとしたように彼に抱きつくピーター。

奈落の底から一転、やけに微笑ましい場面が連続する、個人的に大好きなドイツ~オランダでの一幕ですが、連続するこのシーンを無駄に解説していきたいと思います。

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ピーター寝すぎ問題

まずピーターがベルリンでぶつけられてしまった高速電車ですが、これはヨーロッパ各地を走るインターシティという在来線の特急電車で、おそらくはベルリン中央駅発ウォルフスブルク行だと思われますが、この電車の最高速度は時速300kmを超えます。まともに衝突したピーターはさぞかし痛かったものと思われます。

 

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Final stop Köln 🚄

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ドイツのベルリンから、ピーターが目を覚ますことになるオランダに実在する村Broek op Langedijk(ブルク・オプ・ランゲディク)まで距離にして約750km、東京-鳥取間くらいの距離ですが、現実にインターシティに乗っていくことは可能です。所要時間は最短で約7時間半。ダメージが深かったとはいえ、緊急時にヒーローが気を失っている時間としてはちょっと「長すぎる時間」言わざるを得ません。

また、ブルク・オプ・ランゲディクの最寄り駅「ヘールフホヴァールト」までは直行便がないのでオランダ国内のアーメルスフォールトやユトレヒトで、違う行先インターシティを乗り継がなければならず、ピーターは気を失ったまま誰か知らない人に運ばれて、無賃乗車の距離をむやみに稼いでいたことになります。映画でもちょっと茶化した描かれ方をしていましたが、ブルク・オプ・ランゲディクという村は言っちゃえば片田舎で、前述した乗り継ぎ駅で摘発されれば、その都市の警察署に連行されるはずですので、ともかくヘールフホヴァールトまで乗って来たのでなければ、あの村で拘束されている理由がないことになるんですね。

誰が何のためにピーターを運び歩いたんだろうと思いますが、もしかすると同じ房で捕まってたオレンジ軍団三人組に酔っ払ったノリかなんかで連れ歩かれてしまったのかもしれません。ちなみに後で電話を貸してくれるおじさんも優しい人でしたが、見かけに反して全然怖くなかったあのオランダウルトラス、「話好きの愉快な人が多い」というティピカルなオランダ人イメージを演じて観客の笑いを誘っていましたが、あの中の1人、ピーターが脱出した後、房のドアを元通りに閉めて鍵をかけ直していた方は、イェルン・ファン・コーニンスブルッヘというオランダの超有名なコメディ俳優さんです。2016年の『素敵なサプライズ ブリュッセルの奇妙な代理店』という主演映画が日本でもちょっとだけ話題になりましたね。

 

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撮影場所はオランダではない

キャストはほぼ全員オランダ人、チューリップ畑に風車小屋と、奈落の底のピーターが戦場へ復帰するまでを描いたオランダでの一幕ですが、実はあの一連のシーンはオランダで撮影されたものではありません。ブルク・オプ・ランゲディク村は実在しますが、映画の撮影はプラハでの撮影の合間を縫って、チェコ共和国の国内に組まれたセットやロケーションで行われました。

ヨーロッパは似通った風景が多く、チェコにもチューリップ畑や風車小屋くらいあるんでしょうが、実際のブルク・オプ・ランゲディクは、その地名の由来となった(古代オランダ語で低い湿地を意味)ように際立った低地にあるので、現地をよく知る人間からすると、ちょっと違和感を感じる場面ではあったようです。

これは僕の勝手な個人的見解ですが、本作の製作陣は、スパイダーマンをクライマックスバトルで、ロンドンのタワーブリッジという超有名観光地で暴れさせるというアイデアから逆算して、ヨーロッパ各地のベタベタな名所をピーター達に巡らせるというアイデアを思い付いたんじゃないかなと思います。

いかがでしたでしょうか。

『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』関連記事をあげるブログは数あれど、こんなマイナーな話題を取り上げているのは当ブログだけのような気がしますが、もし気になっていた方がいたとしたら、お役に立てて幸いでございます。

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