先日、東京ドームにプロ野球の巨人対広島戦を観に行った
試合前、奇妙なアナウンスが場内に流れた。要約するとこんな感じ。
「読売巨人軍は、eBASEBALLパワプロ・プロリーグに参戦するため、てぃーの選手、たいじ選手、ころころ選手の3選手と契約しました。彼ら3名が巨人軍のユニフォームを着て、来季のパワプロ・プロリーグを戦います。皆さま、温かいご声援でお迎えください。」
グラウンドに現れる3名の野球とはあまり縁のなさそうな(失礼)ルックスの青年たち。
「e-sportsってゲームのことだよね?」「巨人軍と契約ってお給料でるってこと?」
場内に流れる微妙な空気(筆者の私見です)をよそに粛々と進むセレモニー。どうやら本来のペナントレースの他に、TVゲームの野球ゲーム(ややこしいな)でもチャンピオンを争うってことらしい。楽しみにしている方がいたら気を悪くしないでほしいのだが、正直「そこはファン層被ってないのではないか。」と思ってしまった。
そもそもe-sportsとは
語弊を恐れず言えば、「ゲーム大会」興行のことである。TVゲームの上手なプレイヤーを集めて、大画面で対戦させて、観客がその様子を見るのだ。
「そんなもん見て何が楽しいの」と思うなかれ。ゲーム機本体の進化に歩調を合わせるように、ゲームの操作も複雑化の一途を辿っている。画面内のキャラクターを意のままに操るには相応のテクニックが必要とされ、故に見世物として成立するのだ。アメリカなどでは、数億円の優勝賞金が出る大会も存在する。オリンピックに正式種目として追加が検討されているというニュースが話題になったが、それだけでなく、動画配信サービスをみんなが利用するようになり、そういったフォーマットで「ゲーム実況動画」系コンテンツが人気を集めていることも、最近やけに「e-sports」と耳にするようになった要因だろう。
されどゲーム、たかがゲーム
筆者はTVゲームが好きだ。四十路をとうに迎えているというのに、いまだに子供と一緒になって嗜むというにはやや重きを置きすぎなくらいにはやっている。現在は任天堂スイッチでアサシンクリードオデッセイのクラウド版をプレイしている。物心ついてから「ゲームをやってない時期」が殆どない人生だ。そんな僕だが、やはり「スポーツとゲームは違う」と思うし、ゲームをあたかも素晴らしいものかのように扱う一部の風潮にも抵抗がある。「ボケ防止になる」「集中力が身につく」「コミュニケーションスキルが上がる」など、ゲームにも強いて言えば、挙げたくらいのメリットはあるかもしれない。だが、やはりゲームは他人が作った世界の中で、他人が作ったルールで遊んでいるだけだ。そこにプレイヤーが想像力をさしはさむ余地はほとんどない。ゲーム内の世界はプログラムされた通り、そして操作した通りにしか動かないのだ。
好きなゲームを批判するような文脈になってしまったが、ゲームはやはり「暇つぶし」や「現実逃避の手段」としてある存在だと思う。長時間やったら家人に怪訝な顔をされ、いい歳こいてやってたらちょっと後ろ指さされるような、そういうポジションがちょうど良いと思うのだ。
(文・イラスト:アクトンボーイ)