【マンダロリアン考察3】チャルマンのカンティーナに何があったのか?

【マンダロリアン考察3】チャルマンのカンティーナに何があったのか?

ご注意 本稿はDisney+オリジナルドラマ『マンダロリアン』のエピソード5『ガンファイター』までのネタバレをふんだんに含んだただの妄想記事となっております。未見の方はご注意いただくとともに、本当にお暇な方のみお付き合いください。

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新旧を問わずSWファンの話題を独占し、快進撃を続けるドラマ『マンダロリアン』ですが、先週(2020年1月24日)配信された第五話「ガンファイター(Gunslinger)」では、スターウォーズ正史を揺るがしかねない事態が描かれ、オリジナルトリロジーのファンの間に衝撃が走りました。

This is Mos Eisley Tower. We are Tracking you. Head for bay 35, over.

(こちらモス・アイズリー管制塔、貴船の位置を確認。35番ドックに向かえ。)

宇宙空間で追手と派手なドッグファイトを展開し、勝利は得たもののボロボロに傷ついたマンドー(主人公のマンダロリアン)の船。這う這うの体でなんとか辿り着いた赤褐色の地表をもつ惑星から入った通信は、なんとその星がスターウォーズ始まりの地、タトゥイーンであると告げるものでした。

既にご覧になった方はお判りの通り、我らがマンドーはこの地で、タスケン・レイダーだ、デューバックだ、スピーダーバイクだ、と昔懐かしいクリーチャーやガジェットに出くわすわけですが、なんといっても特筆すべきはモス・アイズリーのカンティーナこと「チャルマンの酒場」の再登場でしょう。

ルーク・スカイウォーカーとハン・ソロが出会った店、オビワンがルークに因縁付けてきた顎ケツ星人ポンダ・バーバの腕を斬り落とした宇宙の札付きどもが集う大人の社交場。店中狭しとひしめく異形のエイリアンたちと、視界に靄をかけるシーシャ(水たばこ)の煙、モーダルノーズが奏でるスイングジャズのエキゾチックな調べも相まって、初見の観客を一気に異世界へと引き込む力がある、個人的には「スターウォーズを象徴する」と考えているくらい強い思い入れのある場所です。子供の頃、このシーンが好きすぎて登場するモブ宇宙人の名前を全部覚え、ベーシックフィギュアを買い揃えたりもしました。

マンドーの船がタトゥイーンに着いたあたりから「これはついに来るぞ。」と予感していたカンティーナの再登場、マンドーが見覚えのあるエントランスを入ったその先には、特徴的なU字型のカウンター、半円状のカラムにボックスシート。そこは見紛うことなきチャルマンの酒場…のはずだったんですが、どうも様子がおかしい。

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劇中時間で9年前(『マンダロリアン』は9ABY)はあんなに騒がしかった店内は閑散とし、客のエイリアンの姿はまばら。バンドの姿もなくBGMは流れていません。黄銅色に輝いていた無数のドリンクサーバーも煤けてしまっているようにみえます。何より印象的なのは、9年前はドロイドは入店すら禁止であったはずなのに、カウンターにいるバーテンを含めた従業員が全てドロイドになってしまっていることです。ドロイド嫌いのバーテンダー、ウーハーはいずこに?皇帝が倒され(ひとまずね)、宇宙に平和が戻ったというのに、いったいチャルマンの酒場に何があったのでしょう。考察してみると、ひとつの飲食店の衰退を通して、パルパティーン以後のスターウォーズ世界の現状を鑑みることができます。

ハット・カルテルの壊滅

「仕事をくれ」と言うマンドーに対して、バーテンダーのドロイドは「(賞金稼ぎ)ギルドはタトゥイーンから撤退したから仕事はない」とにべもない返事。

モス・アイズリー宇宙港といえば300を超えるドッグを抱える銀河有数の巨大港で、ひっきりなしに発着する宇宙船によりならず者たちが大量に流入し、それが店の賑わいを生んでいたわけですが、チャルマンの酒場に客がいないということはつまり旅客の数が激減しているということになります。旅客が減れば当然それを当てにして商売をしている人口も減り、ひいては犯罪行為自体も減るため賞金稼ぎギルドは存在意義を失ってしまったと考えられるわけですが、なぜ急に旅客が減ってしまったのでしょう。

元々タトゥイーンという惑星は土地が貧しく、主要な地場産業と言えば点在する水分農家のみだったのですが、ポッドレース賭博で一財を築いた犯罪王ジャバ・ザ・ハットが、旅客目当ての賭場やいかがわしい歓楽施設をつくり、大量の人・モノ・金の流れを産み出していました。現在のマカオを想像すると分かり易いかもしれません。もとい、ハットの組織の主要なシノギであるスパイス密輸なんかもこの流れに拍車をかけ、ハン・ソロとミレニアムファルコンもルークと出会う前は一役買っていたわけですが、ご存知の通りジャバ・ザ・ハットは、エピソード6、「マンダロリアン」から数えて5年前にお戯れが過ぎてレイアに殺害されてしまいました。享年なんと504歳。

長命で知られるハット族ですので、後進をろくに育てていなかったことが祟り、リーダーを失ったカルテルは瓦解。もともと犯罪に関係したもの中心の物流は滞り、悪党どもはより旨味のある星へと移動、あわれ主を失ったモス・アイズリーはゆっくりと衰亡の道を辿っている最中、といったところなのではないでしょうか。

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帝国の終焉と原住種族の興隆

ハット・カルテルの壊滅の他に、「チャルマンの酒場」に閑古鳥が鳴く要因として考えられるのが、皇帝の死による銀河帝国の崩壊です。各地に圧制を布いた帝国がいなくなれば、普通に考えて市場などは活況を呈しそうなものですが、タトゥイーンの場合はそう単純に行きません。

というのもパルパティーンが率いた銀河帝国は、シスの教義から人間以外の種族を迫害していました。オリジナルトリロジーにおける帝国の幹部会議などをご覧になれば、そこに人間以外の種族がいないことからもお判りいただけると思いますが、タトゥイーンにおいてもそれは例外ではなく、特に近隣住民に恐れられているタスケン・レイダーと呼ばれる種族は、シスのお偉いさんの親の仇ということもあって、帝国在りし日はそりゃもうきつい締め付けを受けていたことは想像に難くありません。

その枷がある日突然外れてしまったと。

エピソード2で描かれたように、人間の集落だろうと何だろうと構わず元気いっぱいに夜襲しに来るタスケンの皆さん。戦いに生きるマンダロリアンが全面対決を避けるくらいの厄介な連中が跋扈している星なんか、観光客は寄り付きませんよね。マンドーとトロ・カリカンがデューン・シーで遭遇したタスケンの大キャラバン。心なしかめちゃくちゃたくさんいたように見えましたが、彼らこそがタトゥイーンの王となる日がついにやってきたのかもしれません。

そんなわけで、ジャバ・ザ・ハット?酷いマフィアだからやっつけちゃえ!

銀河皇帝?穴に落として万事解決!

善いものが悪いもの倒してみんなハッピー!

という風に簡単にはいかなかった世界を描く「マンダロリアン」。

説明などなくても酒場の様子ひとつでここまで伺い知ることが出来る味わい深い作品だと、再確認したところで拙稿をそろそろ終わりたいと思います。

お暇でしたら関連記事もお付き合いください。

ではまた。

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