【MCUプレイバック】過大評価?昨年度最大の話題作『ブラックパンサー』レビュー

【MCUプレイバック】過大評価?昨年度最大の話題作『ブラックパンサー』レビュー
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このブログを始める前の半年間くらいひっそりとアメブロの方で同じような記事を書いていたんですが、現在取り掛かっているアイアンマン関係の記事が調査に思ったよりも時間がかかるせいか更新が遅れてしまい、その埋め草、というと聞こえが大分悪いですがほとんどアクセス数がなかった過去ブログの記事を引っ張ってきてですね、ちょろっと手を加えたりして、お茶を濁しちゃうのはどうなのかな、1回、いや2,3回くらいはいいんじゃないかな、というわけで、今回は昨年(2018)公開されたライアン・クーグラー監督作品の『ブラックパンサー』の感想記事を再アップ致します。イラストは新たに描いたので、ご勘弁下さい。

マーベル・シネマティック・ユニバースのフェイズ3も無事完結した現在、これからシリーズを観直そうという方も少なくないと思いますが、本稿はネタバレありの記事となっています。その上過疎っていることをいいことに、現在よりも若干攻撃的な文章も多く散見されますが、都会でたまに見かける壁に向かって何かブツブツ言ってるおっさんの言ってることと同じだと思って、どうか大目に見て頂きたいと思います。それではいってみましょう。

ブラックパンサーのあらすじ

アフリカ大陸に位置する、文明国家が未だ発見できていない秘境にある国ワカンダは、受けた衝撃を完全に吸収してしまうという希少鉱石・ヴィブラニウムの唯一の産出国でした。歴代のワカンダの王はこの鉱石が悪しき者の手に渡らないよう国の存在を秘匿する一方で、ヴィブラニウムを極秘ルートで販売することで得る巨額の資金で最先端のテクノロジーを生み出してきました。先代国王であった父ティ・チャカをシビルウォーの際のテロで亡くした若きティ・チャラ(チャドウィック・ボーズマン)は次代の王となるべく即位の儀式に臨み、正当な手段で他の王位挑戦者を退けます。儀式を終えた彼は国王にして国の象徴「ブラックパンサー」となりますがが、まだ民衆を率いる自信を持てないまま、代々受け継がれた掟と自意識の間で葛藤します。そんな折、謎の男エリック・キルモンガー(マイケル・B・ジョーダン)は武器商人のユリシーズ・クロウ(アンディ・サーキス)と手を組み、大英博物館からヴィブラニウム製の武器を盗み出し、ワカンダへの潜入を企てます。キルモンガーの目的は何か。ティ・チャラはワカンダを守ることができるのか?というのが大まかなあらすじです。

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鑑賞当時の感想※不満(ツッコミは加筆)

正直な感想は「物足りねえ!」の一言に尽きます。

『最後のジェダイ』の異様に高い批評家レーティングの件がなくとも、海外レビューサイトの得点は眉毛に唾をべったりつけて受け止めなければならないと判ってはいたはずでしたが、それにしても期待の方が大きかったのか、鑑賞を終えた今、消化不良の感がぬぐえません。僕は25年近くマーベルコミックスのファンをやっていますので、リテラシーの部分ではおそらく問題ないどころか、逆にその沢山ありすぎる知識が邪魔をして今回の感想に至っている可能性もありますので、それを踏まえて以下をお読みください。まだ鑑賞後一日しか経過していないので、整理しきれていませんが、不満に感じた点を列挙していきます。

まず、この手の映画で絶対にハズしてはならないポイント、アクションについて、です。『ブラックパンサー』にもアクション的にそこそこかっこいいシーンは登場します。しかし、その悉くが、予告編などに事前映像で既に公開済みのものであったという点はいかがなものでしょうか。爆風を利用してビルを駆けあがるシーン、走行する車の前輪に手を突っ込んで止めるシーン、ゲームの三国無双よろしく大ジャンプからの着地衝撃で敵の集団を吹っ飛ばすシーン、全部観たことありますよね。「ネタバレが嫌なら予告編見なければいいのに」なんて言いぐさは、今作みたいにTV劇場問わず大キャンペーンを張ってティーザーを流しまくってる映画では通らないです。あれしかないなら隠しとけよな。そのほかの格闘シーンや、集団戦闘シーンはというと、これが非常に凡庸で、印象に残らないのものばかり。ルッソ兄弟や、マシュー・ヴォーン(キングスマン)らのキレキレのアクション演出に目が慣れてしまってる分、『ブラックパンサー』のアクションシーンは退屈を感じる部分が多かったです。肉弾戦を得意とするヒーローの映画としては、平均点というのは決して及第点ではありません。

こう時間が経過した今読んでみると、この人は何を鼻息荒く怒ってらっしゃるんでしょうかね。「絶対にハズしてはならないポイント」とかね。誰が決めたんだよと。陛下好きだから期待してたんだね。ブラックパンサーというキャラクターは、コミックだととにかく腕っぷしが「強い」のです。初登場時に一人でファンタスティック4を制圧したりしてましたし、インフィニティーサーガの元ネタ、ジョナサン・ヒックマンの『インフィニティ』では、襲い来るサノスの配下ブラック・オーダーに対し、他のヒーローが劣勢の中ただ一人単独で白星を挙げたりもしていました。殴り合いに強い主人公が見れると思っていたわけです。

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ストーリーについては、見る前から「ライオンキング」みたいな話になるんじゃないかな・・・。と想像していましたが、まあ、その通りでした。でもそれはいいんです、王道のストーリーには王道たる魅力がちゃんとありディテールさえ異なれば、新しくて面白い物語として受け止めることはできます。実際、今作のストーリーは、エリック・キルモンガーという複雑で魅力のあるヴィランを配置することにより、多層的に仕上がっていたと思いますし、プロットにも大きな破綻は見られなかったです。

ただ、ですねもっと掘り下げたほうが良い場面がちょいちょい欠落しているせいで、結局なんだか全部ひっくるめて「単純な話だな」という印象に結局なってしまっています。具体的に言うと、大きく二つ、まず本作の陰の主人公といっていいエリック・キルモンガーについて。彼が父親を失い、成人して立派な殺し屋として名を馳せるまでの描写が少なすぎます。おそらくは父親が遺した日記?のようなものを読んで、自らのルーツや博物館に展示してあるヴィブラニウムの所在を知っていたってところまでは納得してもいいですが、彼がいかにして「強く」なったのか、体にびっしりと刻まれた撃墜数ならぬ殺した人間の数はいかにその数を増やしていったのか、彼が全てを犠牲にしてでも実現したかったこととは何か、父親が国を裏切ってでも実現したかった世界平和?現在の世界の力関係の逆転を望むなら、虐げられている状態の幼少時の描写、彼が観る歪んだ世界の構図が短いカットでいいんで必要でした。「ヴィブラニウムさえあれば・・・!」エリックが決定的にそう思い込むきっかけが描かれていてほしかったです。

この辺は今でもそう思いますね。キルモンガー最高でした。MCU見回しても5本の指には入る素敵な敵でしたね。それだけにもっとたっぷり見たかった気がします。しかし言うに事欠いて『ライオンキング』ってね。そういえばもうすぐ実写映画が公開されますね。あれはハッピーことジョン・ファヴロー監督作品なので、ある意味MCUと理解しています。

もう一つは、主人公テイチャラの敗北からの復活、勝利への説明がやっぱり不足しています。そもそもテイチャラは正々堂々とした舞台で、キルモンガーに一度敗北しています。そこから程なくして復活、同条件で再戦、勝利というからにはそれなりの理屈が必要です。理屈というと偉そうですが、要は「テイチャラがキルモンガーを凌駕する理由」が欲しかったということですね。

それが、ヴィブラニウムを不活性化する線路のシステムを利用したという地の利や、単に悪くはない人だから家族を中心に味方する人間が多かった、というだけでは、説得力も物語的なカタルシスも足りません。お母ちゃんがでしゃばってくるのも印象悪いですね。

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地の利の話でいうと最後の戦闘がやけに尺だけは長いせいで、キルモンガーがその条件に気付いてしまっているような描写もありますしね。また、滝から落下したテイチャラが、次に登場する場面がエムバクの居城の医療室というのもね。序盤で敵対していたライバルのエムバクを、頼りがいのある味方になったという、オイしい出し方するなら、滝つぼから(もしくは下流から)助けた場面、エムバクが逡巡や葛藤を乗り越えてテイチャラを王として認め保護することを決意する場面、それぞれが必要だったと思います。どれも想像で補えなくはないですが、なぜ必要かあえて言えば、そこが映画的に良いシーンに成り得たからです。みすみす英雄譚として「アガる」機会を逃している感じが惜しかったです

「愚者は壁を築き、賢者は橋を架ける」なんとなく良いセリフに聞こえるミッドクレジットシーンの演説も、反トランプ大統領派の声明そのもののような、映画の帰着としては首を傾げざるを得ません。キルモンガーのお父さんが正しくて、ワカンダの伝統が間違っていた、そんな話でいいんですかね?それともMCU次作の『アベンジャーズ:インフィニティーウォー』でサノスが襲ってくるので、世界中に対抗しうる強力な兵器を配布しておかないと困る理由でもあるんでしょうか。

なんか作品全体が、今ハリウッドで流行している価値観に当て込んだ説教臭さで満ちているという点ですよね。そんでアクション映画やヒーロー映画としてもなんとなく勘所を外しているような出来なので、偉そうなこと言う前に、まずちゃんと面白くしてくれと、そのようなことが言いたかったのです。

ほとんどを黒人で固めたキャストについては新進気鋭の若手と、フォレスト・ウィテカーに代表される芸達者のハイブリッドで当然水準以上の安定感のある演技を楽しむことができました。また美術や特殊効果も、今をときめくMCUですから、そりゃそんじょそこらの映画のレベルではないことは言わずもがな、文句ばっかり言いましたが『ブラックパンサー』は平均点以上の作品であるということは、最後に付け加えておきます。あくまでMCU最新作に期待するプラスアルファが足りなかった、というだけの話ですね。総じて同じMCU作品群を並べた時にどのくらいの面白さかというと『ドクター・ストレンジ』と同じくらい。です。題材として、化ける要素が沢山あっただけにやや、残念でした。

総評78点(フィギュア欲しい指数95%)

今となっては『ドクター・ストレンジ』大好きなんですけどね。

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