【2020年台風の目】ネクストブレイク確定!松本直也『怪獣8号』に乗り遅れるな

【2020年台風の目】ネクストブレイク確定!松本直也『怪獣8号』に乗り遅れるな
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松本直也『怪獣8号』

『鬼滅の刃』を例えに出さなくとも、傑作の呼び声高い連載漫画はいつかは完結してしまうもの。

連載誌の売上を維持するために人気作品によるストーリーの冗長な引き延ばしが目立った時代も今は昔、近年は作家ファーストの「人気絶頂時に完結する」作品も珍しくなくなりました。週刊誌や月刊誌を彩る作品の新陳代謝は、年々活発になっていく傾向にあり、コミックファンとしては、クオリティ維持の観点からはこれは喜ばしいことではあるのですが、連載の終了によって空いた心の穴は新たな作品によってしか埋められず、故に新しいお気に入り作品との出会いの喜びは何にも代えがたいものがあります。

本稿でご紹介する作品は、集英社のWeb漫画サイト『ジャンプ+』で2020年7月より連載を開始した松本直也(敬称略)の『怪獣8号』です。

この作品は本稿執筆時点(2020.10.16)では単行本1巻がまだ発売されておらず、ジャンプ+サイト上にてアーカイブされている数話が読めるのみですし、特設サイトやWikipediaもまだないような状態なのですが、第一話から100万PVを記録したり、Twitterのトレンド入りをしたりとコミックファンの間で『怪獣8号』はさながら今年最大の「台風の目」の様相を呈しています。とはいえ、一般的にはまだまだ知らない人が多いので、本稿の読者諸兄におかれましては、これを機に「青田買い」や「古参」気分を楽しまれてはいかがでしょうか。

第一話(無料公開中)からちゃんと面白い(凄いことです)ので、読んでさえもらえれば魅力は伝わると思うのですが、老婆心ながら、新しいものに食指がなかなか動かないタイプの読者の為に、軽いイントロダクションと、第14話まで読んだうえでの見どころを下記にて紹介させて頂きます。

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どんなストーリー?

主人公・日比野カフカと5歳下の幼なじみ・亜白ミナは幼少時、襲い来る巨大怪獣とその被害を目の当たりにし「大きくなったら防衛隊員になって二人で怪獣を全滅させよう」と約束します。

時は流れてカフカ32歳。ミナ(27歳)は長じて約束通り防衛隊員となり、類稀な才能を発揮し若くして部隊長として防衛隊の重要な戦力となりますが、カフカは選抜試験にすら通らず、失意を胸に抱えながら防衛隊が倒した怪獣の残骸を清掃する仕事で激務をこなし、毎日苦い酒をかっくらっておりました。

しかし、ある日職場にバイトとしてやってきた防衛隊志望の後輩との出会いをきっかけに、カフカはもう一度夢を追うことを決意します。

ところが決意した矢先に、カフカは謎の小型怪獣に寄生され、自らが怪獣へと変容してしまうのです。

カフカの夢は、ミナとの約束は潰えてしまうのか、第一話のあらすじはこんな感じです。

↓こちらが公式ページです。

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『怪獣8号』のここが凄い!

筆者は漫画に限らず創作物(映画やドラマも)を評する上で、「世界観」「キャラクター(造形含む)」「ストーリー」の3つの要素に分けて吟味するのが好きなのですが、『怪獣8号』はまだ連載開始間もなく(2020年10月16日現在で第14話)、色々と要素が出そろっていない感が強いため、ぼんやりとしたプッシュになりますがご容赦ください。

まず本作の作者の松本直也は、研究に研究を重ね、古今東西のあらゆる人気作品からエッセンスを抽出し本作を構築したと推測します。その採用したエッセンスが悉く要所を押さえたものとなっており、それが『怪獣8号』を読んだ読者の多くが感じたであろう「読みやすさ」と「こういうのが読みたかった」という読後感に繋がっているのではないかと考えます。

例えば『宇宙兄弟』のような作品から、負け犬がもう一度夢に向かう姿を。

例えば『ワールドトリガー』のような作品から現実世界と地続きになっているファンタジーな世界観を。

例えば『進撃の巨人』のような作品から、巨大生物との戦闘を。

例えば『ドロヘドロ』のような作品から、異形でコミカルなキャラクターを。

例えば『ワンパンマン』のような作品から、普段はぼんやりに見えるけど実は超強い主人公を、といった具合です。

誤解しないで頂きたいのは、作者はこういった要素を自分流にちゃんと調理してオリジナル作品に昇華していますので、間違っても模倣であるとか、そういった指摘はあたりません。むしろともすれば雑多になってしまう多種多様な要素を、よくぞひとつにまとめて自らの作品に落とし込んだと、プロデューサーとしての作者の才能には畏敬の念を感じます。褒め方が回りくどくて申し訳ない。

また、漫画として絶対に外せないポイント、作画やキャラクター造形も素晴らしいです。男性キャラクターはちゃんとカッコよく、女性キャラクターはちゃんと可愛らしい、さすがベテラン作家といった安定感です。

最後に、これは完全に個人の見解ですが、最近の少年漫画はベタな展開を恐れてか、極度な作家主義のサイクルに入ってかは判りませんが、王道から遠く逸れてしまっている作品の比率が高くなっているように感じます。

主人公はちゃんと強く、ヒロインは可憐で美しく、味方キャラクターは簡単にいなくなったりしない、まだ始まったばかりなので確定ではありませんが、『怪獣8号』はそんな「楽しく読める」王道作品の雰囲気を全身に纏った、一周して稀有な作品に現在のところ見受けられます。

間違いなく今年年末から2021年にかけて、大きな話題となる作品でしょう。

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