「すべての魚を味方にする男」
お寿司屋さんの話?ってな感じのキャッチコピーをひっさげ、2019年2月8日(金)いよいよ全国劇場公開される『アクアマン』。
全米でも初登場No.1を達成🎉
世界各国でNo.1を獲得している #アクアマン がついに全米でも公開され、✨初登場No.1✨のオープニング成績を記録👏
同週の2位〜4位までの作品の成績を全て足しても届かない圧倒的な超特大ヒットのスタートになりました❗️ pic.twitter.com/VwNCoXqNe1
— DC公式 (@dc_jp) December 25, 2018
日本に先駆けて公開された国々では封切り以来、大ヒット街道邁進中でアメコミファンとしてはまずは一安心と言いたいところですが、『アントマン&ワスプ』のレビュー記事のときにご紹介した通り、日本の観客はアメコミヒーロー映画に対してかなり厳しい傾向にあり、予断は許さない状況です。
先日もですね、職場で映画好きの同僚と2019年に公開される作品について話していた際に『アクアマン』の話になったんですが、アメコミヒーローに詳しくない彼がこの映画のことを「アリエル(ディズニーの人魚姫)のおっさん版みたいな映画でしょ?」とのたまったんですね。
確かに両方とも舞台は海底にある王国ですし、お魚さんと喋ったり一緒に泳いだり、人間との関係に揺れ動いたりすると思いますが、類似しているのはせいぜい30%(結構あるな)くらいなものです。
こんな誤解を受けるのもひとえにアクアマンの知名度が日本ではまだ高くないが故。
このキャラクターのことをまだあまり知らない読者の方に手っ取り早く認知してもらい、ついでに僕の大好きなもう一人の「海のヒーロー」マーベルのネイモアも紹介してしまおうと思い立ち、今回の記事を書くことにしました。
アクアマンとネイモア
アメリカンコミックスの2大出版社、DCコミックスとMARVELコミック。
この段階の説明は不要かもしれませんが、DCはバットマンやスーパーマン、MARVELはスパイダーマンやキャプテン・アメリカらの著作権を保有し、長年に渡り業界の覇権を争ってきました。ちなみにアクアマンはDCの方です。で、しのぎを削ってきたこの二社は、ライバル会社の人気キャラクターに類似したキャラクターを作り、自社のコミックスに登場させる、という乱暴な便乗商法をお互いに何度もやりあってきました。(※MARVEL側が仕掛けることが多め)
そうしたライバル社をモデルにして生まれたキャラの有名どころの例としては、フラッシュ(DC)を真似たクイックシルバー(MARVEL)や、グリーンアロー(DC)からのホークアイ(MARVEL)などが挙げられます。で、このアクアマンは1941年、DCコミックスが、MARVELの人気キャラクター、ネイモア・ザ・サブマリナー(こちらは1939年生まれ)をモチーフに作り上げたキャラクターなのです。
アクアマンとネイモア。どちらも海底王国アトランティスの王にしてスーパーヒーロー。母親が人間というところも同じですし、その他の共通点もたくさんありますが、「ヒーローとしてどちらが上か?」というのが長年それぞれのファンの間で論争の種になってきました。
誕生から80年近く経過した現在も、消え去ることなくそれぞれの出版社で確固たる地位を築いてきたこの二人の海の王様を、次項から項目別に比較してみましょう。
強いのはどっち?
2人とも職業は王様ですが、事あれば自ら先頭に立って戦う武闘派。設定上与えられたヒーローとしての能力も一見そっくりですが、果たして優劣はつくのでしょうか。
まず、2人とも水の中を高速で泳ぐことができます。代表的な設定数値ではネイモアは時速80km(カマスと同じくらい)、アクアマンは時速100km超(カジキマグロと同じくらい)出せるらしいです。最高時速20km以上の違いは、ゼロ戦とP-51の例えを出すまでもなくアクアマンに有利に働きそうですが、たいていの場合ネイモアの方が軽装(というよりパンツ一丁)ですので小回りは彼の方がきくかもしれません。2人とも超人的なタフネスとパワーを持っており、視覚、嗅覚などの超感覚も備えています。アクアマンは海洋生物と話すことができ、ネイモアはテレパシーで海の生き物とコミュニケーションをとって、その生物の特性をコピーすることができます。
アクアマンのネイモアに対する能力上の優位は、先ほど挙げた泳ぐ速度だけかもしれませんが、ネイモアのアクアマンに対する優位としては、海洋生物の特性を模倣できる能力によって、電気ウナギのように電撃を放つことができるということと、そして何より足首についている小さな翼で、空を飛ぶこともできるということが挙げられます。海水中においての感電の危険性や、制空権をとることによる戦略の広がりから考えて、一対一、身一つで戦った場合はネイモアに軍配が上がりそうです。
ただ、アクアマンは武装として印象的なオレンジ色のスケールメール(鱗状の鎧)や、ネプチューンのトライデント(三又槍)を常に装備しています。このトライデントがまたヤバくてですね、水をコントロールできるなんて朝飯前、天候を操作したり、フォースフィールドを発生させたり、エネルギービームを放ったりと何でもできるのです。ネイモアもほぼ同じことができる同じ名前の武器を所有してはいるのですが、素手での戦いが好きなのか持ってこないことが多いので、ネイモアがいつものように相手を舐めて武器を家に置いてきたら、アクアマンが圧倒的に有利になるでしょう。
総じて、戦闘能力だけとってみればオリジネーターであるネイモアの方がほんの少し強いと言えるかもしれません。
友だちが多いのはどっち?
王たるもの、人望は力です。
映画でご存知の方も多いように、アクアマンはDCのスーパーヒーローチーム「ジャスティスリーグ」の創設メンバーであり、現在もなお中核メンバーの一人です。言うまでもなくジャスティスリーグには、あのスーパーマンやワンダーウーマンといったDCとマーベル通して見ても最強クラスの二人が所属しているわけで、ひとたびアクアマンが危機に陥れば、彼らを始めとするジャスティスリーグの仲間が殺到してくることになります。
【#超人苑】
DCフィルムズの世界はますます拡大💥『#ジャスティスリーグ』に続き、#アクアマン や #フラッシュ が主人公の映画、#ワンダーウーマン の新作、そしてシャザムやグリーンランタン etc…
超人たちの勢いは止まらない‼ pic.twitter.com/ZGIWKeKsUV
— 超人級ヒット!ジャスティス・リーグ 公式 (@justiceleaguejp) December 7, 2017
対するネイモアも、長い歴史を振り返ってみれば、X-MENのメンバーだったり、ディフェンダーズというヒーローチームにいたり、ヒーロー達の首脳集団イルミナティの一員だったりと、人脈はとても広いものがあります。ただ、ですね、さきほどからネイモアをアクアマンと同列の「ヒーロー」扱いしていますがこれには語弊がありまして、ネイモアは一応ヒーローとして創造されたキャラクターなんですが、与えられた傲慢な気質、高すぎる気位、端的に言えば「めっちゃワガママ」な性格によって、ひとたび臍を曲げるとヴィラン側に立ってヒーロー達と敵対してしまったりするのです。その臍を曲げる頻度も結構高め。そのせいかヴィラン側にも顔が効き、人気スーパーヴィランのDr.ドゥームとも同盟関係にありますが、ネイモアがピンチの時に駆け付けてくれる友だちがいるかというと、甚だ疑問と言わざるを得ません。
集団的自衛権が何かと取りざたされる昨今、本人の強さだけで事の優劣は決まりません。そもそも陣営をあっちいったりこっちいったりする奴は、現実社会でも友達を作るのは難しいでしょう。
この項目においてネイモアはアクアマンの敵ではなさそうです。
モテるのはどっち?
誰が言ったか「英雄色を好む」。現代ではポリコレ的に物議をかもしそうな言葉ではありますが、歴史を紐解いてみれば、この言葉が一面の真理を顕していることもまた事実。
われらがネイモア・ザ・サブマリナーは、その点自らの欲望に忠実でして、ドーマという幼馴染でずっと想いを寄せてくれている女性(現在は奥さん)がいるにも関わらず、ファンタスティック4のスーザンだとか、X-MENのエマ・フロストだとか、他人の恋人や奥さんにちょっかいかけたり、誘拐したりといけ好かないことこの上ありません。どちらかといえばネイモアの肩を持ちたい筆者にとっても、ネイモアの色恋沙汰は、わざわざトラブルの種をまいているようにしかみえず擁護しかねます。
その点、アクアマンは違います。
アクアマンと言えば、アトランティスとは別の海底王国ゼベルの美しき元王女、メラとのおしどり夫婦で有名です。このゼベルという国は、アクアマンの治めるアトランティスとは元々敵対関係にありまして、メラも幼少時から双子の姉妹ハイラと共にアトランティスを打倒すべく戦闘の訓練をつんでいたのですが、なりゆきからアクアマンと行動を共にするうちに恋に落ち、国を捨ててアクアマンの奥さんになりました。まさにヒーローにふさわしい王道のモテストーリー。メラはDCのヒーローの中でもトップクラスに強いので、コミックではジャスティスリーグと肩を並べて戦うこともあります。
LOS ANGELES: Calling all Aquaman fans! This Wednesday, head to the @ChineseTheatres at 6PM PT to watch the cast of Aquaman arrive at the LA Premiere. Submit your questions for the cast using #Aquaman. pic.twitter.com/fon96lQMnh
— Aquaman Movie (@aquamanmovie) December 10, 2018
二人の間に生まれたアクアベイビーがブラックマンタに殺されて、一時離縁したりしていましたが、すったもんだの末復縁。辛いことがあっても二人手を取り合って乗り越えていく、真の愛をアクアマンは手に入れていると言えるでしょう。
知り合いが読む可能性がある当ブログにおいては、この項目もアクアマンの勝利とさせて頂きます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
2勝1敗でアクアマン勝利とあいなりましたが、実写映画公開を前に多少の忖度を行ったことは否定できません。
というのも、冒頭で約80年前にこの2人のキャラクターは誕生したと書きましたが、それから現代にいたるまで、2人の辿ってきた道は平坦ではありませんでした。
海の中で自由に生活し、魚とコミュニケーションをとれるという設定が、若干幼稚に見えるのかどちらも誕生後しばらくして人気が低迷、個人タイトル消滅の憂き目にあったりしています。それでもマーベルのネイモアは、最古参ヒーローからのヴィラン転向でアイデンティティをなんとか確保し、存在感を出し続けていましたが、アクアマンは「ジャスティスリーグ史上、最も不人気なヒーロー」なんて言われたりして不遇の時代が続き、つい最近までジョークのネタにされたりしていたんです。
転機が訪れたのは、2011年に開始されたDCコミックスのリランチ、NEW52でした。新規読者を招き入れるため、DCコミックスは全ての連載のエピソードを一度完結させ、「これまでの設定にとらわれない」全52本のアメコミタイトルが新たに1話から再スタートしました。その中にアクアマンの個人タイトルも含まれていたんですが、この連載を担当したライターというのが、7年経った今では「業界最高のライター」との呼び声高いジェフ・ジョーンズ。その驚くべき手腕で不人気であったヒーローを見事蘇らせ、ジャスティスリーグの中でも屈指の人気キャラクターに押し上げたのです。その結果、古くからアクアマンを知っている人間にとっては奇跡のように感じる、単独実写映画公開というわけなんです。
公開されている『アクアマン』予告編を観ると、予想以上に明るくポップで、そして迫力のある映像に否が応にも期待は高まります。ジェイソン・モモア演じるアクアマンは、NEW52以降のコミック版とは大きく異なる、野性味とあふれるイメージで、原作とは違った解釈のユーモアのあるキャラクターに仕上がっていそうです。人よりちょっとだけ多めに映画を観てきた僕の勘が、「この映画は当たりだ。」と囁いています。
皆さんも「ヒーロー映画はもう飽きた」なんて言わずに、是非劇場に足を運んでくださいね。そして、アクアマンがお気に召したならば、その兄弟みたいなキャラクター、ネイモアのこともちょっと調べたりしてみてください。※Googleで「ネイモア」と検索すると、僕が昔書いた記事がでてきます。そちらも併せて宜しく。